保険代理店廃業させてみた
*この記事は保険代理店を実際2007年から経営者していた保険代理店事業を経営していた方と弊社のコンサルティング担当との会話に承諾を得てインタビュー形式でライティングしたものです。
保険代理店の廃業はむしろメリットしかない
保険代理店は廃業させることをデメリットと感じるかと言われるとノーです。
むしろ、良い判断だと考えている。
保険代理店を廃業させるメリット
- 保険会社と私たち保険代理店の主従関係が年々強くなっている
- 保険料が競合他社との競争で年々安くなるため保険代理店のうまみが少ない
- 手数料は年々契約を上回らないと減って行くというサイクルからの脱却
- コンプライアンス研修など事務業務を考えるとコスパが悪さも解消
- 顧客離れたする引退層が多い中の奪い合い市場から抜け出すことができる
保険代理店業はもはや仕事がない
新規ターゲットはネット型保険、直扱い、今後AIの導入で保険代理店と保険会社の役回りに差がなくなっています。
保険代理店と保険会社の関係は非常に難しく、言うならば主従関係性が強い
保険会社がノーと言えばノーであり、言った言わないとなれば保険会社が強くなる関係性は変わらない。
さらに言えば、保険会社の経営が難航した場合保険代理店のノルマだけが上がると言う不信感を感じる。
保険会社への不満も年々同業者同士で高まっている
保険会社と保険代理店の店主会議や経営者会議・研修などでは同業者との交流も多いですが、ビジネスとして機能している会社は事業継承で元々のマーケットを持っているところくらいです。
コロナで一気に加速した保険会社と保険代理店との不仲
保険会社の社員は5割から8割出社せず、ほとんど担当者との連絡が取れない状況にもかかわらず、緊急事態宣言下にも関わらずノルマの復活(半年〜1年の免除が保険会社によってありました)が起こりました。
保険会社の社員は出社すらせず、担当が新年度で変わったのに挨拶すらないという状態でいきなりのノルマ復活に「どう契約を取れと言うんだ」という経営者たちの非難は想像できました。
高齢代理店を一気い大型代理店に吸収させたい保険会社の狙い
この5年〜10年で保険代理店の経営者は高齢世代に突入し、後継者問題と吸収合併、さらには設備投資が行き届かないことによる不祥事が相次ぎました。
一昔前までとは今の保険業のコンプライアンスの厳しさは比べものにならず、そんな『古い保険屋』を整理するのが保険会社の急務とも言われています。
保険料と保険代理店の利益は直結している
簡単に言えば保険料の50%以上は保険代理店に入っていると平均していっていいでしょう。
その仕組みを踏まえて保険会社が保険料を引き下げるということは必然的に保険代理店の手数料が減っていきます。
これは保険代理店の経営者として一切口出しできない仕組みであり、値引き競争する小売店と同様の状況に反発すらできない状態になりました。
結果として保険代理店は前年以上の挙積契約を取る必要が出てきます。
なぜなら、損害保険に関して言えば自動車保険は元々等級が上がれば保険料が下がる仕組みであり、元々が自転車操業になりやすい手数料体系であったのも事実だと言えます。
しかし、契約を増やすために従業員を増やすというパワーと経費、手数料のバランスは保険代理店に甘くはありません。
もちろん、保険会社が従業員を増やすことへの補助をすることもありません。
つまり、継続的に自転車操業であり、経営や資金面で焦付きが出れば即廃業となるのです。
廃業したくない保険代理店の存在
保険代理店はそこまでの悪環境でなぜ経営を続けるかと言えば廃業すれば、今まで入ってきた手数料は保険会社が保険会社との関わりが強い大型代理店に振り分けられます。
つまり、自分の懐に入るお金をみすみすライバルに渡すことになってしまうのです。
それと同時に保険代理店を専業している場合、ファイナンシャルプランナーくらいしか業種変更ができないと言う点もあります。
兼業代理店は廃業こそ良い決断
継続的に手数料が入る反面、研修や監査、会議と時間とのコスパは悪いと言えます。
中古車販売店などでの自賠責や任意保険が関われば別ですが、大手のディーラーでこそ年間数億単位の手数料が支給されますが、一般的な中古車販売店であれば、なかなか事業としては成立しにくいと言えます。
結果として保険代理店業を廃業させる方が賢明な選択肢だと考える経営者が増えているのも事実だと言えます。
生保代理店と損保代理店
生命保険と損保で言えばもはや、損保は事業モデルとしての魅力はほぼゼロなのが現状です。
生命保険はやはり、一回の契約での手数料 入金額が大きいため経営の継続はしやすいと言えます。
しかし、他のビジネスと比較すれば、良いとも言えないでしょう。
コロナや経済恐慌に弱い保険代理店
コロナ禍でダメージが思いの外大きいのが保険代理店です。
元々保険は万が一のためのことにかけるもので、法人の保険などはコロナ禍などの経済恐慌で真っ先に解約されます。
それが契約して間がなければ、マイナス計上が入りペナルティとして自社の口座から払い済みの手数料を回収されます。
これが仮に従業員の給料や家賃で使ったとしてもそのお金は融資を考えるしかないのです。
顧客離れと新規客はどこに
保険加入率はほぼ天井であり、顧客の奪い合いしか生き残る術はない。
年間で純新規は少ない代理店だと10%ほどで、ほとんどは保険の見直しで競争し奪い合い、法律スレスレのトークで契約を取り合います。
さらに顧客の高齢化による損保で言えばクルマ離れ、老人ホーム、自宅のダウンサイジングで保険料は減る一方なのです。
逆に新規の狙いである若者、若年層は車はシェアカー、戸建ては少なくマンションの低価格火災保険なのです。
AI導入で保険代理店業はなくなる
生命保険はこれまで絶対対面でした。
しかし、コロナの影響で非対面契約が加速し、ついにAI導入説までが現実味を帯びてきました。
AIが導入されるとほぼ9割の契約業務がAIに飲み込まれてしまいます。
不正やコンプライアンス違反のリスクも少ないため、保険会社も相当なお金を導入してもペイできると考えるのです。
つまり、保険代理店という仕事や事業自体が近々なくなってしまう可能性が強いと言えるのです。