なぜ金利が低いのに株価や景気が良くならないのか
金利と景気の関係
ご存じの通り、金利とは、預金や借金に対する利息です。
今、日本はマイナス金利で大規模な金融緩和・指値オペ等で金利を押し下げています。
逆に言えば、日本はマイナス金利というくらいなのですか、株価は上がるべき局面なのではないかと考えます。
株価が上がれば日本の経済や景気は良くなるはずなのに、日常生活では真逆とも言える状態だと感じているはずです。
今回は、金利が株価や景気にどのような影響を与えているのか。
そして、投資や資産運用をする側はどのような部分に注意が必要で、稼げるチャンスをどう見出すかを解説していきます。
金利と株価の関係
金利は株価に大きな影響を与える因子です。
実際、どのように影響を与えるかと言えば、
金利が下がれば株価は上がります。
金利が上がれば株価は下がります。
常に金利は短期と長期の国債の値段で変動し、バランスを常に取りつつ経済は成り立っています。
初歩的な話ですが、金利を下げれば株価が上がるならば、金利はマイナス金利ほど強いものはないのではないか?
そう考えるはずです。
日本の金融緩和政策と景気
日銀が大規模な金融緩和を続けているために日本の金利は非常に低水準で推移しています。
金融緩和を続けて投資や消費を刺激しているため、景気は良くなりそうなのですが、そうならないのは自然利子率が非常に低いことに原因があるとされています。
自然利子率については補足を書いておきます。
自然利子率が低いということが、シンプルに借りたい人がいないということです。
だからこそ、もっと借りる側の条件をよくして、借りてもらう相手を探すのが金融緩和政策と言えます。
しかし、元々需要がないところに需要を生むというのは、結論として先日付の支出を早める効果しかないため、需要という貯金がもう日本にはないとも言えるのです。
需要=経済の回転率となるため、需要がないと景気は良くならないのです。
自然利子率とは
自然利子率とは、簡単に言えば『本当の金利』の姿で、別名で『中立金利』とも呼ばれています。
自然利子率は、この金利ならお金を借りたいという人とこの金利ならお金を貸したいという人の合致点です。
市場の金利<自然利子率となれば、金融緩和が計画される
つまり、需要が多ければ金利は高くても借りる人が多く、需要がなければ、どれだけ金利を下げても借り手が見つからないため自然利子率は需要の低さに引っ張られ自然利子率は低下していきます。
この自然利子率が、日本はどんどんと下がり、需要と供給を満たすwinwinの金利が非常に低いのです。
なぜ日本は金融緩和をしてマイナス金利でも借りたい需要がないのか
日本政府としては金融緩和によって、高めたい需要の層は『不動産』です。
つまり、みんなに家を買うためにお金を借りて欲しいと考えています。
しかし、ご存じの通り、少子高齢化で空き家が増え、空き家率が増えている現状で言えを買う人は少ないのです。
さらには、生涯賃貸でも良い、あるいは様々な理由で住宅ローンを組みたくても組めないという層には当たらないため、景気は一向によくならないのです。
アメリカを含む先進国全体が自然利子率は低下傾向
では、金利を上げるトレンドに入っている日本以外の国はどうかというと、実は自然利子率は低下傾向にあります。
『金利を上げてもまだ低い』この言葉が一番近い状態で、賃金の伸びはそこまで上がっていないため、昨今の感染症や地政学リスクで需要はさらに低下しています。
そうなると、日本と比較して多少金利が高く、生産年齢人口が低くとも自然利子率は低下してしまうのです。
生産年齢人口とは
生産年齢人口とは生産活動の中心にいる人口層のことで、15歳以上65歳未満の人口を言います。≠労働力人口
*労働力人口は、労働の意思と労働可能な能力を持った15歳以上の人
▷▷▷新興国投資を忘れる日本の投資家、米国株の次の経済トレンド
貯金をさせたくない日本は金利を上げたくない
格差が拡大する中、家計の金融資産残高の増加は、2020年4~12月に+58.5兆円(純増ではなくグロス増加)
現金貯蓄・預金が好きな日本人は83%の資産を銀行に預けています。
つまり、手元に現金が入れば貯金をしてしまうため経済効果や刺激にはならないと政府は考えるのです。
その点で金利を仮に日本が上げてしまえば、ますます預貯金や債権などの有益性が増すため預け入れ資産が増加するのです。
元々リスクを取りつつ投資していた株式などは売られ預け入れられるため、株価は下落することに繋がります。
ここでまとめると、
『金利が上がると、株価が下がる』
『金利が下がると、株価が上がる』
ことになります。
さらに、金利高ければ高いほど、ハイリスクな金融商品から投資家は撤退する傾向にもあります。
金利が低いのに景気が良くならない、債権との関係性
債券は、国や企業などが発行し、投資家から資金を借り入れるための有価証券です。
社債投資や国債への投資というのは債権投資のカテゴリーになります。
債権投資の特徴は社債や国債自体、償還日には基本的に全額投資家へ返済されます。
つまり倒産や債務不履行・デフォルトが起きない限り、安定した資産運用・投資と考えることができます。
そんなリスクが比較的少ない債権投資でも、金利が上がれば上がるだけ投資家のメリットが減っていきます。
そのため金利上昇=債権価格は下落というロジックが生まれます。
逆に、金利が低いと債権価格は上がるため国債の金利などは上がりやすくなります。
なぜ長期金利が上がると国債などの債権価格は下がるのか
ここで、金利と景気にリンクする状態が起こります。
金利が上がれば債権を持っているよりも預貯金にしておく方がリスクなく、自己資金を増やすことができると考えるためです。
もちろん、逆に長期金利をイールドカーブコントロールのように抑制すると、国債や社債などの債権などを保有して金利収益を求めようとするためです。
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イールドカーブコントロールとは?
イールドカーブコントロールで、長短期操作とも呼ばれます。
短期金利が長期金利よりも高くなる逆イールド状態を順イールド状態にさせるため、10年国債(長期)の上限金利以上に行かないように無制限に政府が買い上げる仕組みです。
金利の低い日本は国債投資にメリットが多い?
これまでのお伝えしたことを踏まえると、国債への投資に有効性が高いということに気づくはずです。
過去の記事を含め、日本は財務省が過去に報告した通り自国通貨建てでの国債発行ではデフォルトを起こす可能性はない。と言っています。
社債のリスクよりも国債のリスクの方が低いとも感じることができるはずです。
しかし、リスクが低いということはどういうことかというと、リターンが非常に小さいということです。
仮に数十億円の国債を保有すれば、低いリターンでも運用増収額は確保できますが、元本からの成長率は低いのです。
つまり、多くの資本があればポートフォリオの一部で国債投資は有効ですが、資本が少ない投資家のスタートとして保有するには、メリットは大きく得ることができないと言えます。