有名インスタグラマー 『kumagif♂』的ブランド論と社会戦略 ──「完璧ではなく、解像度で信頼されたい」

有名インスタグラマー 『kumagif♂』的ブランド論と社会戦略 ──「完璧ではなく、解像度で信頼されたい」

初インタビュー インスタグラマー 『kumagif♂』的ブランド論と社会戦略

本業では企業コンサルティングを行うkumagif♂さん。

2025年から本格的にAIやDXの事業を設立。

そんな『一流』経営者がなぜか今、

Instagramでのエルメスやコスメを中心とした発信を行いフォロワーが1万人を既に超えている。

——いくつもの異なる領域を横断しながら、あくまで“感性”を起点に言葉を編み出すkumagif♂さんを今回は徹底インタビューします。

kumagif♂さんにとって、今後のラグジュアリーブランドという位置付けはどう変化すると思いますか

■ ラグジュアリーは「優位」ではなく「分岐」である

ラグジュアリーという領域は、単なる高価格帯の消費活動ではなく、これからの社会における“分岐点のようなポジションになると私は考えています。

格差が拡大していく時代において、プロダクトやサービスが「どこに属するか」は、“誰に届けたいか”と同義になります。

エルメスやロレックス、メルセデスベンツやフェラーリ、リッツカールトンやフォーシーズンズといったブランドは、単に象徴的な存在ではなく、「誰を選び、誰に選ばれたいか」を体現している組織だと考えています。

■ ラグジュアリーの二極化と、企業戦略としての“選別”

すでに、レクサスの戦略は非常に示唆的です。
一方で“手に届く高級”というブランド構築を進めつつ、他方では「LM」のような非・平均的所得層に対して明確にターゲティングされた価格帯を提示しています。

輸入車においても、アウディがA4を終売させ、SUVやSAVカテゴリへ集中投資していくという動きには、単なる人気ジャンルの選択ではなく、ライフスタイルへの最適化と、可処分時間の設計に対する戦略的眼差しを感じます。

■ サービス産業における価格の「飛躍」と「哲学」

2025年に開業予定の帝国ホテル京都では、一泊300万円というプライシングが予定されています。
この価格帯は、単なる話題性ではなく、明確なポジショニングを意味します。
つまり、誰もが泊まれるホテルではなく、「誰が泊まるか」を定義したホテルなのです

一方で、マリオット系列に見られるように、同一ブランドグループの中で価格帯のレンジを大きく拡張し、異なる体験の選択肢を並行して提示するアプローチもあります。

■ DX導入が問う「価格」と「質」のバランス

サービスを突き詰めるためにプライシングを上げるのか。
それとも価格を抑えるかわりに、どの“手触り”だけは守るのか。
この選別は、単なる「コスト管理」ではなく、顧客の記憶に何を残すかという問いと直結しています。

そこにDX導入がもたらすのは、“省力化”ではなく“精度化”であるべきです。
初期投資(イニシャルコスト)はかかるが、中長期的には確実に回収できる構造を設計できるかどうか。
この判断に乗り遅れるか否かは、経営者にとってきわめて本質的な“態度表明”になるはずです。

■ 観察者としての視座を持つ

私は、こうした一連の動きを“ユーザー視点”ではなく“構造観察者”として見ていたいと思っています。

誰がどの顧客を選び、どのように共犯関係を築くのか。
そのブランドが未来のどこを指しているのか。
ラグジュアリーという現象は、美意識と経済戦略が交差する現代の鏡だと感じています。

男性であるkumagif♂さんがコスメという領域に、なぜ今あらためて注目されたのですか?

同世代の男性にも「感性の手入れは生き方の質に関わる」ということを伝えていきたい

コスメは、僕にとって「感性の最後の砦」なんです。
それまで肌のことなんて、正直まったく気にしたことがなかった。結婚するまでは、ゴルフやテニス、海などで日差しに当たる生活が当たり前で、紫外線を浴びっぱなしでした。

 特に海外駐在のときは、水が肌に合わずに、急激に乾燥肌になったり。
ストレスで肌荒れも頻発して、「自分ってこんなに肌に敏感な体質だったんだ」と後から気づいたんです。

でも、そこから“何を纏うか”“どの香りに心が動くか”といった、他人ではなく自分自身と向き合う行為としてのケアに惹かれていきました。
コスメって、誰かのための装いじゃなくて、“自分の内側にある感性を確かめる場”なんですよね。

今はアラフォー世代として、アンチエイジングにも取り組んでいます。企業とタイアップしながら、本気の変化を見せていくことで、同世代の男性にも「感性の手入れは生き方の質に関わる」ということを伝えていけたらと思っています。

 情報過多な時代において、どうすれば「信頼」を得られると考えていますか?

僕は、数や勢いではなく“質”だと思っています。
たとえば、その人が「自分の言葉で話しているかどうか」って、すごく伝わるんですよね。
見えないものをちゃんと見ようとしているか、自分の目で見て、自分の手で触れて考えたものを語っているか。
そういう姿勢がある人にこそ、人は自然と信頼を寄せるんだと思います。

対局にあるのが『AI』だとも考えています。

つまり、『AI』に事業として携わっている一方で『AI』にできないものを模索している。

今思う、その答えが『人間が感じたという信頼』だと考えています。

僕自身、発信に関しては外注は一切していません

すべて自分で書き、自分で撮り、時に妻の率直なアドバイスをもらいながら進めています。
「完璧なもの」ではなく、「自分の解像度で見た世界」を伝えることを重視しているんです。

どんなに小さなモノでも、誰かに借りた言葉じゃなくて、自分の中から生まれた実感を届ける。
それだけを続けていくと、不思議なことに、“届く人の密度”がどんどん濃くなってくるんですよね

『AI』に事業として携わっている一方で『AI』にできないものを模索している。

今思う、その答えが『人間が感じたという信頼』だと考えています。

「ただの人」として発信し続けるために、意識していることはありますか?

SNSというのは、ある意味で“立場”を脱げる場所だと思うんです。
でも、だからこそそこに本音がなかったら、すぐに空洞になるとも感じています。

僕が発信の中で一番大切にしているのは、「自分が心から信じていることしか扱わない」あるいは「試したいという好奇心を感じるもの」です。
それがエルメスであれ、コスメであれ、AIであれ、どんなジャンルでも、“誰かにウケそうだから選んだ”テーマではなく、自分がずっと向き合いたいと思ってきた問いです。

本気で信じているからこそ、発言に余分な脚色がいらないし、役職や評価みたいなものを背負わずに済む。
“ただの人”として語るって、実はすごく強い立ち位置だと思っていて。そこには、自分の足で立つための覚悟と、余計なものを脱ぎ捨てる潔さが必要だと感じています。

2025年から本格的にDXやAIの事業を開始した経緯なども教えてください

日本の中小企業の多くはAIやDXに壊滅的にリテラシーがない

はもはやDXやAIは“できる・できない”ではなく、“どう使うか”が問われるフェーズに入りました。

しかし、多くの企業は依然として「委託の延長線上」でAIやデジタルを捉えていて、現場で活きた活用がなかなか根付きません。

日本は金融リテラシーが低いと言われていますが、IT分野はもっと低い。

中小企業においてはAIやDXへの拒絶と壊滅的にリテラシーがないところが多い。

もはやAIやDXに興味を示さない経営者は『老害』となり、己の会社を潰すことになってしまう。

そこで私は、「自分たちで使い、自分たちで理解し、自分たちで企業やブランドが活用していくAIとDX」

つまり“内製”という視点でのAIやDXの導入支援事業を開始しました。

パッケージ商品を購入すればそのパッケージがなくなれば、会社の積み重ねてきた有益な情報やノウハウ、レガシーの行き先を失う。

それこそが今後の企業のリスクです。

ですが、『内製化』できるパッケージはレゴブロックで言えば、お城を作っても良いし、ホテルを作っても良いという『選択肢』を得ることができます。

内製化したAIやDXは会社・企業の資産となる。

しかし、パッケージに依存してしまった企業は家賃のように固定費が乗ってくる。

ここが重要だと思っています。

特に、中小企業は高齢化が進み経営者はAIやDXへの理解が得にくい。

その中で従業員がAIの導入、DX化を進言しているケースも多くあります。

そんな有能な社員の手伝いができれば事業の意義があると思います。

ツール選定やワークフロー設計だけでなく、社内で誰が主語を持つのか、その設計にまで踏み込んでいます。

単なるデジタル化ではなく、“思考と習慣の書き換え”まで含めて企業に伴走する。そのための土台を、今、改めてつくっています。

内製化したAIやDXは会社・企業の資産となる。

今後、kumagif♂というブランドで目指したいことは?

kumagif♂は、僕にとって「社会と自分を繋ぐ実験装置」のような存在です。
ブランディングなど決してしません。むしろ不要だと考えます。

そして実は僕はしないと決めていることがあるんです。
独立前から「小売はしない」と決めていて、いまも自分でモノをつくって販売したり、リアルな運営をすることは考えていません。
だからこそ逆に、プロダクトやサービスそのものに強い関心がある。
自分では扱わないからこそ、他者の手による“世界観の具現化”をどう見届けるか、どう伴走できるかという観点で見ています。

今後は、たとえば“世界観を扱うプロダクト*や、
“言語化できない感覚”を共有・探究できる場に関わっていけたらと思っています。
ラグジュアリーとテクノロジー、感性と論理、アナログとAI——
そうした一見、対極にあるものたちを、どう一つの場に同居させるか。
それがkumagif♂という存在を通して、自分が果たしたい役割だと思っています。

kumagif♂ Bearcrest Advisory Ltd. 代表取締役社長  

kumagif♂公式Instagramhttps://www.instagram.com/kumagif_hermes_skincare/    
kumagif♂エルメスのnotehttps://note.com/kumagif

kumagif♂さんとのインタビューを終えて

目に見える成果や数字だけでは測れない、「心の手触り」や「言葉にならない確信」。
kumagif♂さんの語りからは、そんなものを丁寧に取り扱う覚悟が感じられました。

SNSも、AIも、ラグジュアリーも、すべては“自分をどう扱うか”の表現である——この一言に、これからの時代の発信の在り方のヒントが詰まっているように思います。

一流養成学校でもAIやDXなどには比較的早く着目してきました。

そんなkumagif♂さんは本名で執筆を行なっており、今回このインタビューを気にAIやDXについての記事も依頼中です。