投資家目線で見た『東証の再編成』「プライム」「スタンダード」「グロース」の本当の意味

投資家目線で見た『東証の再編成』「プライム」「スタンダード」「グロース」の本当の意味

投資家目線で見た『東証の再編成』「プライム」「スタンダード」「グロース」の本当の意味

2020年4月4日、に登場した東証の「プライム」、「スタンダード」、「グロース」市場は株式投資をする上で何に注意をするべきなのか。

いつの間にか変わったこの東証の編成は何を目的とし、どんな経済効果を生むのか。

そしてその再編成されて投資家はどう日本経済や投資の判断をするのか。

日本の金融市場に置いていかれないためにも読んでもらえる記事を書いていきます。

元々東証はどんな体制で運営されていたのか

2020年4月4日までは東証は一部・二部・ジャスダック(スタンダード・グロース)・マザーズの4市場(*スタンダード・グロースを別で数える場合は5市場)で運営されていました。

東証一部と二部は上場条件がクリアできたか否か、東証一部の特徴・優位性という明確な基準分けはありませんでした。

そもそも上場条件がマザーズとジャスダックは重複している部分があり、投資家は明確にマザーズとJASDAQの違いを理解できずにいました。

参考:マザーズとジャスダック

ジャスダックが約694社に対しマザーズは約426社で市場規模はジャスダックが大きいと判断できました。

ジャスダックは

  • 信頼性
  • 革新性
  • 地域・国際性

を重視していると言われていましたが、非常に曖昧で、

「ジャスダックで上場企業に一定の規模や実績・歴史のある企業も含まれるからジャスダックにしよう」

「スタートアップで創業歴が浅く、先進性(IT関連企業など)があるからマザーズにしよう」

という抽象的な状態でした。

元々、日本マクドナルドホールディングス株式会社もジャスダックで上場していました。(現在は 東証スタンダード

東証プライムなどの再編成をさせる必要性

『上場=東証一部』このような考え方に日本経済全体がなり、全上場企業約4000社の半数を超える約2200社が東証一部に上場していました。

上場企業の半分が一部上場なので、企業の優位性や個別銘柄の選定が非常に難しい状態になっていました。

そうなると、海外の投資家はますます投資先を選定できず、ETFなどが候補になってしまいます。

日本経済を復活させるためにも、海外からの投資資産を個別銘柄にも流入させる狙いがありました。

東証の再編成での特徴

プライム市場の特徴

上場のための基準は様々ですが、今回の市場再編でポイントとなるのは、株式取引の円滑な流通や公正な価格形成を目的として、これまでよりも流通株式比率が重要視されている点です

さらにプライム市場に関しては後半でも解説する『グローバル(海外の投資家・金融機関)』な投資家との関係性が構築できる企業であることが条件です。

さまざまな意見があるにしても、旧『東証一部』と同じステータスは企業の信用を証明する大きな材料だと言えます。

スタンダード市場の特徴

スタンダード市場は、1477社が上場しており、プライム市場に次いで高い上場基準をクリアしている企業が上場しています。

グロース市場の特徴

従来の東証市場でいう、ジャスダックとマザーズを合わせたような市場となっています。

グロース市場は,3市場の中で上場基準が最も緩いですが、スタートアップ企業が多いため投資家としては、急成長株が集まる市場とも言えます。

東証プライム市場への上場条件

元々上場するには非常に複雑な上場条件をクリアする必要がありました。

それに加え、『流動性』の審査基準が今回の東証市場再編で厳しい難題だと言われています。

特に、流通株式時価総額は100億円以上という条件や、上場した企業の株式保有が経営者や会社の実質的なオーナーが過剰に保有している企業はかなりハードルの高い条件となりました。

具体的に35%以上の流通株式比率にしなければなりません。

株式会社の株式分配は会社の発言権・役員の人事権など運営に大きな影響をあたる部分であるため、多くの会社は自社株を投資家に保有してもらいたい反面、一人の投資家に多く持たれては困るということが根底にあります。

もちろん、親族等に自社株を保有させるなどの対策は今までもありましたが、株主数を800人以上にしないとプライム市場への上場ができないため、東証一部に上場して条件に対応しつつ、会社を守り続けてきた老舗企業は大きなタスクとなりました。

流通株式比率とは?

流通株式比率は実質的に市場で取引されている株式の割合です。

簡単に言えば、大口投資家や役員などが保有量を差し引いて市場に出回っている株式の量ということです。

東証株価指数・TOPIXはどうなったのか?

東証株価指数(TOPIX)は元々、東証一部上場企業の株価の値動きを指数化していました。

1968年1月4日の時価総額を100ポイントとし、現在の時価総額が何ポイントかで流動性を把握するのに用いられてきました。

この東証再編成により、東証一部上場の全銘柄ではなく、全ての市場の流通株式時価総額100億円以上の企業で構成されるようになりました。

*現在の状態は中盤『東証の再編成は結果として』に記載

東証の再編成は結果として・・・

明確でわかりやすい株式市場の再構築をすることで、海外の投資家も日本の株式を購入してもらいたいという狙いは根底にあるものの、結果はどうなのかを説明します。

今回の東証の再編成に伴って、元々東証一部だった企業がプライムの基準をクリアできない状態が複数社出てきました。

しかし、そのプライム基準を遵守できない企業を全て、スタンダードへ格下げさせると逆に経済効果は悪くなります。

そのため、「東証プライムの基準をクリアするように頑張ります」という計画書を出せば経過措置として東証プライムに籍を置ける状態になっています。

プライム市場の1,839社中295社は経過措置を受ける状態

プライム市場に上場する1,839社中295社、約16%は経過措置を受けている状態です。

それに加え、その経過措置は達成期限に定めがないため、ぶら下がり続けることができてしまうため、経済発展の後押しになるほどの効果はないというのが再編成の結果だと言えます。

TOPIXも結果としては

東証一部上場をしていた企業の多くは東証プライムへ移行していますが、プライム落ちした企業もTOPIXに今現在継続して算出基準に含まれています。

流通時価総額の基準を満たさない金額の大きさに合わせて、指数への影響比率も下がる対策は取られています。

この臨時対策は2025年1月までとされています。

しかし、結果として東証再編成を行うことで、『今現在の結果で言えば、何の指数かわからない状態』になったとも言えます。

プライム市場は本当に海外の投資家や海外の機関投資家ウケするのか

企業努力は行われているものの残念ながら日本の今の経済力と株式の時価総額は一定程度比例してしまいます。

GAFAの4社の合計株式時価総額で日本企業全体の時価総額を上回ってしまっている状態です。

ちなみに、Apple1社だけで日本の代表企業トヨタの10倍の時価総額です。

▷▷GAFAの知っているようで知らない話

だからこそ、日本の投資家が米国株やETFを購入している中、海外の投資家がプライム市場が流通時価総額100億円以上でフィルタリングされた市場だからということで投資熱が上がるとは考えにくいと言えます。

▷▷世界中が全力で米国株に投資する理由

さらに、株価純資産倍率(PBR)の指標で米国株を比較すると、旧東証一部の企業の半数は1倍を下回っており、米国株はS&P500株価指数で比較すると2%ほどしかないという現実があります。

東証プライムに注目した外国人投資家が少ない理由

東証再編で『グローバルマーケット』に注目して海外に資金流入を一定レベル期待した中、前述の市場規模で雲泥の差が生まれており、外国人投資家はやはり米国株の好トレンドに魅力を感じているようです。

東証や日本企業ではなく日本という国や、法定通貨の『円』自体に不安感があり、買い控えがさらに抑止力となり、注目する投資家が少なかったと言えます。

むしろ、海外投資化が現在保有する日本株が想像以上に、業績やESGの対応・DX化などに停滞し遅いと感じている投資家が多いのも事実です。

『座礁資産』になる前に売り切りたいと思う銘柄を保有している場合、新たに日本株を探す投資家は少ないと考えることができます。

座礁資産とは?

座礁資産とは、市場環境や社会環境が激変することにより、価値が大きく下がる資産のことを言います。

特にESG関連に出遅れをしている企業などに言われることが多い

▷▷ESG投資とは?方法やSDGsとの関係性、儲かる仕組みはあるのか?

海外の投資家は東証市場をどう見ているのか

外国人投資家や海外の投資ファンドなどは、残念ながら日本株を買い越す傾向はほぼない状態です。

むしろ、海外の投資家は売り続け、日銀はその都度買い支えをするため、日本株が割安でも米国株がよほどのトレンド転換しない限り、魅力的とは言えない状態だと言えます。

日本株を保有する外国人投資家の選定理由

外国人投資家の中で日本株を保有している銘柄には特徴があり、基本的にはDX(デジタルトランスフォーメーション)やIT関連企業に多い傾向があります。

▷▷DX関連銘柄は儲かるのか?なぜDX化が投資家の評価点なのか

その理由としては、やはりGAFAや米国株で好調な市場に連動する値動きが予想されるためだと言えます。

特に、円安相場で日本株は割安だと判断し、短期ではなく中長期のポートフォリオでリスクが低めの新興企業を探すと日本株がマッチングしたと考えられます。

▷▷『悪い円安』で投資家もお金持ちも会社員も苦しむ理由

『プライム落ち』した企業に注目が集まる理由

東証一部というブランドは日本企業にとってある程度のステータス化ができていました。

しかし、

今回旧東証一部からスタンダードへ、実質的なランクダウンをすることに大きなデメリットが実際ないとも言えます。

そのため、予想以上に経過措置を選ばず、スタンダードへ以降した旧東証一部上場企業が多かったのも予想外の出来事だったと言えます。

むしろ、背伸びをしない企業・リスクを取らない企業・見栄を張らない企業として注目を集めているため、プライムへ無理してしがみ付く必要性や向上心が投資家にはウケが悪かったとも言えます。

ちなみに東証一部からスタンダードに移る企業は約2割にも達しました。

東証プライムのステータスが上がらない理由

プライム市場は、東証一部の名残である『成長』や『ガバナンス』以外に、『グローバル企業』がマッチするという解釈の仕方があります。

言い換えれば、国際競争力や世界シェアを必要としない企業というのは日本には多くあるため、東証プライムになれてもスタンダードを選ぶことが最善という企業があることが抜け落ちていたとも言えます。

さらに、プライム市場とスタンダードであれば、市場の信用や知名度の高い企業はプライムの方が多いとも言えますが、投資家からすれば知名度よりも今後成長する企業を見つけたいというマインドが強いため、むしろ、スタンダード市場の方が投資熱は高い状態になっています。