「自己破産できない」投資と免責不許可事由の関係

「自己破産できない」投資と免責不許可事由の関係

「自己破産できない」投資と免責不許可事由の関係

コロナやインフレ、住宅ローンの金利、不景気どんな理由であっても、年々一般的な家庭や人間に近づくのが『自己破産』です。

カードでのリボ払いなどファイナンスサービスが便利になったのち、iPhoneなどの日常になくてはならないモノを分割で購入する経済サイクルができ、少しのミスジャッジが簡単に自己破産の道以外を無くしてしまう時代になりました。

今回はそんな中、

自己破産すれば?と言われて自己破産の申請をしても通らない、自己破産難民や、自己破産できないけど生活もできないという生活困窮者もいます。

家もクルマもあるけど手離せない、過酷な状況についてお話していきます。

➡︎なぜ不動産投資が自己破産しやすい投資なのか

嘘みたいな本当の自己破産の話

一般企業でサラリーマンとして生活していて、FXや株式投資で大きな損失を出してしまった。

こんなケースは山のようにあります。

そんな場合に、生活費が足らず色々な理由をつけて融資を受けたり、現金化させるスキームで借金をしてしまった。

こんなことも日常茶飯事にあります。

しかし、

FXや株式投資が理由で自己破産できる可能性は100%とは言えず、そもそも自己破産なんてしたくないと思っている人が、自己破産させてくださいとお願いしてもできない状態になるのです

自己破産は簡単にはできない

自己破産は裁判所の「免責不許可事由に該当する」という判断によって自己破産ができない場合があります。

  • ギャンブル・過大な浪費・株式投資などを原因とした借金である
  • 意図的に財産を隠し自己破産の申し立てを行う ・特定の債権者の借金のみ優先して返済する
  • 返済できる見込みもないのに自己破産を前提としてお金を借りる
  • 裁判所に事実と異なる説明を行う
  • 2度目以降の自己破産の場合、前回の免責から7年以内に再度自己破産の申し立てを行う

などが挙げられます。

免責不許可事由に該当すれば認められない

自己破産の『収入に見合わない』の範囲が想像より広い

借金を作った原因や行動が、ブランドモノや高級車、キャバクラなどでの豪遊などであれば自己責任です。

というのは『収入に見合わない』と理解できるはずです。

しかし、株式投資やFXでも『収入に見合わない』と判断されるケースがあるので自己破産できずに生活に困窮する方がいるのです。

投資で利益を出すのは偶然であり『たまたま』

筆者の私も首を傾げるのですが、株式投資やFXでの利益はあくまでも『運任せ』『偶然』『たまたま』の射幸行為として扱われています。

*射幸行為とは賭博等のギャンブル性の高い行為のこと

つまり、『運任せ』『偶然』『たまたま』はギャンブルとの違いを証明することができなくなります。

ハイリスクな投資は自己破産できない可能性があることを踏まえてポートフォリオを組む必要があります。

ちなみに、投資を理由に自己破産している方は意外にも少なく全体の1.5%ほどです。

「自己破産できないのはわかっている」けど自己破産させて

「自己破産できないのはわかっている」けど自己破産させてほしい、このように裁判官に訴え、今後絶対にこのようなことが起きないように投資はやめる、会社に就職する、と強く訴えた場合は自己破産できる可能性があります。

なぜ普通に生きていて『自己破産』するのか

自己破産でも絶対支払わないといけないのは『税金』

税金が払えないために自己破産を結果としてすることもあります。

自己破産をしても滞納している税金、『払わないといけない税金』が消えることはありません。

そうなると、自己破産をすることで解決できることがないと思うかもしれません。

しかし、税金を払うために分割支払い(遅延損害金の納付)をしたり、税金を優先的に納める代わりに生活費などをキャッシングやカードローンに頼ることになりやすいためです。

税金を借金して納付するメリットは?

キャッシングやカードローンで納付しないといけない税金を一括で支払うという選択肢にはメリットがあるか、と考え比較してみると、残念ながらキャッシングやカードローンの年利は15~20%が上限です。

税金の支払いを分割にしたり、遅延損害金に発生する金利は年20%です。

つまり、どちらも大して変わらないということになります。

自己破産できない場合の対処法

自己破産できないとなれば、任意整理か個人再生での解決を検討する他選択肢はなくなってきます。

任意整理の多くは、『金利なしの元本返済』になります。

『借りたものは返す』の原則は維持されます。

他にも『個人再生』という制度を用いて、借金を5分の1、上限で10分の1に縮小させ、3年間で返すように調整をすることもできます。

債務整理には4つ種類

種類特徴メリットデメリット
任意整理・将来の利息をカットする
・残債は3〜5年程度で分割払い
・他の債務整理に比べて手続きが簡単で手軽
・資産を失うリスクが低い
・家族や職場などに内緒で手続きしやすい
・元金は減額されないことがほとんど
・信用情報機関に登録される
個人再生・裁判所に認可を受けて借金を大幅に減額する
・残債は3~5年間で返済する計画を立てる
・任意整理より減額が大きい
・自己破産よりは資産を失うリスクが少ない
・借金が一部残るので、手続き後も返済が必要
・場合によっては車や資産を失う可能性はある
・信用情報機関に登録される
自己破産・裁判所に認可を受けてすべての借金返済を免除される・借金がなくなり、手続き後の返済も必要もなくなる・家や車などの財産を原則処分する必要がある
・一定の範囲で職業の制限がある
・信用情報機関に登録される
過払い金請求・過剰に支払っていた利息を取り戻すための請求・過剰に払っていた利息分が返金される・特になし

自己破産は人生の終わり=×

「自己破産は人生の終わり」

そんな風に解釈している方々も大勢いますが、自己破産で人生が終わるほどのダメージは意外にも受けません。

ちなみに自己破産をしてできなくなることは大きく12個あります。

しかし、基本的な生活は維持できるように法律があるため、やり過ごせる範囲内だと言えます。

  1. 新たな借入れ・融資はほぼ不可能
  2. 信販系の賃貸保証会社の利用は一定期間不可
  3. 連帯保証人になれなくなる
  4. 債権者に返済できない
  5. スマホなどの本体が支払い途中の場合利用できなくなる可能性がある
  6. 生活必需品以外の,自宅不動産・動産の所有・保有ができない
  7. 預金口座が凍結されて出金できない
  8. 破産手続中は裁判所の許可なく住居移転や海外渡航ができない
  9. 破産手続中は郵便物を直接受け取れない
  10. 破産手続開始から免責が許可されるまでの間は公的資格を使った仕事ができない
  11. 免責許可決定確定日から7年間は,もう1度自己破産・免責許可が難しい
  12. 免責許可決定確定日から7年間は,個人再生の給与所得者等再生を利用できない

借金の残債を消すための行為のため、新規借入・融資ができないのは当然ですが、住み替えで賃貸契約ができないのは、保有財産の差し押さえと絡み家や住所がなくなると感じるかもしれません。

自己破産すればホームレスになる?住む家・場所がなくなる問題

自己破産すると、基本的に持ち家は競売になります。

競売にかけられたあとの住まいを新規で探さないといけない場合、即ホームレスになるのかというとそうではありません。

実際、信販系の保証会社を利用しなければそもそも、自己破産しているかどうかわかりません。

他にも保証人不要の賃貸物件は基本的に賃貸保証会社が代理人のような存在となり、賃貸契約を交わすことができます。

全くお金がなく、家も失ったという場合は、住所がないと定職にもつけないので、寮付きの仕事か居住支援法人などを利用してまずは住居の確保をするべきだと言えます。

保証人不要の賃貸物件は多い

CMなどでよく見る『UR賃貸住宅』も保証人は不要で、市営住宅・県営住宅は年収上限がありますが、自己破産する側としてはあまり問題がないと言えます。

UR賃貸住宅独立行政法人URが運営
中堅~高所得者層も利用できる公的賃貸住宅
公営住宅各自治体で運営している団地
収入が一定以下など条件がある
公社賃貸住宅各自治体で運営している
各自治体による入居条件がある
中堅~高所得者層も利用できる公的賃貸住宅

ちなみに、UR賃貸の場合、

●基準額 単身者 ・家賃8万2500円以上の場合:基準額は家賃の4倍
・家賃8万2500円~20万円未満の場合:基準額は33万円
・家賃20万円以上の場合:基準額は40万円
●基準額 世帯入居
・家賃8万2500円以上の場合:基準額は家賃の4倍
・家賃8万2500円~20万円未満の場合:基準額は25万円
・家賃20万円以上の場合:基準額は40万円

『自己破産するとスマホが持てない』問題

自己破産してスマホが契約できなくなった、という話を聞きますが、実際は新規購入時に

本体代金を分割できないというだけです。
スマホ自体がインフラに完全に根付いているため、自己破産だけが理由で新規契約を断るキャリアはありません。

もちろん、自己破産しても誰かしらの支援で現金一括で購入できれば助かりますが、中古のスマホを現金で買って、キャリアと契約すれば、問題なくスマホの利用は自己破産をしてもできることになります。

自己破産するとクビになる?

自己破産をして会社をクビになった、という方の多くは資格ありきの仕事をしている場合です。

それ以外で自己破産を理由に会社が従業員をクビにすることはできません。

就業規則や労働契約書など採用された仕事ができない場合は普通解雇の可能性があります。

自己破産し不動産営業や保険募集などで使用する公的資格が使えない場合です。

➡︎保険業界が自己破産に厳しいのは本当なのか?

簡単に言えば、クルマの免許を取り消しされて、トラックの運転業務ができないという状態と同じです。

自己破産するとクルマも時計も奪われる

生活必需品以外の,自宅不動産・動産の所有・保有ができない

この自己破産するとクルマも時計も奪われるという話も、嘘ではありません。

しかし、自己破産してない人より良いクルマに乗って金無垢のダイヤ時計をして「借金はなしね」とはいかないというだけのことです。

仕事で使うためのローン残際のない20万円ほどの価値のクルマであれば、『動産』とされません。

腕時計もロレックスなどはもちろん財産となるため、没収されますがGショックまで回収されたというのは聞いたことがありません。

自己破産すると自分の預金口座から現金が出せない

預金口座が凍結されて出金できない

0円で住む場所もなく生活をしなければならないのではなく、99万円までは自由財産のため好きなように持つことができます。

しかし、それ以上の現金は返せなかった債権者への返済に少しでも充てましょう。ということです。

ちなみ99万円の財産で日雇やバイトなど日本で求人する全ての仕事に就いても食べていけるとされています。

そのため、求人する会社側は最低賃金や最低時給を守らないいけないのです。

参考図書

自己破産と借金整理を考えたら読む本 [ 弁護士法人ベリーベスト法律事務所 ]

粉飾&黒字倒産を読む 「あぶない決算書」を見抜く技術 [ 矢部謙介 ]

借金は9割返せる! 今さら聞けない… お金の悩みを解決する本 [ 福田 亮 ]