なぜ普通に生きていて『自己破産』するのか

なぜ普通に生きていて『自己破産』するのか

なぜ普通に生きていて『自己破産』するのか

固定収入・給料収入・営業利益があっても自己破産している事実

自己破産をする方々というのはどんな印象でしょうか?

定職がない、ギャンブル癖がある、などさまざまな印象を個々が持っていると思います。

しかし、現実では自己破産をする32%は正社員で勤めている方です。

よく経営者が事業に失敗して自己破産をするケースというのを聞きますが、自営業や経営者、無限責任を負う役員などを含めても約5.5%しかいません。

つまりは『普通の人』がどれだけ自己破産をする時代になっているかということに繋がってくるのです。

ちなみに、自己破産した方々の経済力という面においても、25万円以上の収入がある方が10%以上います。

つまり正社員で月収25万円、年収300万円台でも十分に自己破産のリスクがあるということです。

自己破産は誰もが有り得る理由(ギャンブルしない人の方が可能性大)

自己破産の理由は『生活苦・低所得』が6割を超える

この調査では複数回答が可能になっていましたが、6割を超える方が『生活苦・低所得』であり、その次に多い23%が、『病気・医療費』による負債(借入・借金)なのです。

つまり、持病を含む疾患等で経済困窮に陥ってしまった場合、自己破産をする可能性があるということです。

もちろん、生命保険等の活用や利用は考慮されるべきですが、仮にも入院日額の上限が30日であった場合などであれば、半年以上入院した場合、手出しの金額は相当な金額になります。

そのため、毎日一生懸命働いていた方が、贅沢もしなければギャンブルをせずとも自己破産することになるのです。

負債原因割合(複数回答)
生活苦・低所得61.69%
病気・医療費23.31%
失業・転職17.58%
給料の減少9.60%
事業資金16.13%
負債の返済(保証以外)20.48%
保証債務9.44%
第三者の債務の肩代わり2.82%
名義貸し1.29%
生活用品の購入14.76%
教育資金9.84%
冠婚葬祭1.61%
住宅購入7.26%
ギャンブル7.18%
浪費・遊興費11.37%
投資(株式,会員権,不動産等)1.53%
クレジットカードによる購入9.35%
その他15.00%

 

自己破産した負債・借金の金額

2020年度の調査では、36.78%が100万円〜300万円未満の負債で自己破産を行なっています。

55.32%は500万円未満で自己破産をしています。

このデータの注意点は住宅ローンを含んだ記載と住宅ローンを含まないデータが混在していて、この数値が出ていることです。

2020年に一番売れた自動車であるトヨタのプリウスが約300万円だと考えると、想像以上に自己破産せざるおえない状況というのが身近にあるとも言えます。

つまりは、高級車でない国産車を保有し、会社に勤めているごくごく普通の方でも支払いに一度滞るとギャンブルなどしていなくとも自己破産する可能性は多いにあると言えるのです。

前述で国産車プリウスを例に出しましたが、ローンやキャシングの理由は生活の補填が1位で2位は車の購入なのです。

つまり普通にサラリーマンがクルマを購入するだけでも十分自己破産のリスクは上がるのです。

ちなみに4%ほどは教育資金や奨学金などを理由に借りています。

当たり前の『学生生活』が自己破産の原因になる

大学では47.5%、短期大学で55.2%は奨学金によって学校生活・学生生活を過ごしています。

奨学金の多くは『将来返済する借金』です。

少し古いデータですが2016年までの5年間で、

奨学金に絡む自己破産者は、1万5338人います。

そのうち本人が8108人、保証人が計7230人です。

下記の表は日本学生支援機構が奨学金の延滞について調査したデータです。

奨学金の延滞は払えない可能性・自己破産などのリスク・予備軍となりうる方々と位置付けることもできるのです。

抽出人数回答人数回答率参考母数
延滞者15,781人2,048人13.0%152千人
無延滞者7,673人1,458人19.0%4,111千人

引用元:日本学生支援機構(奨学金の返還者に関する属性調査結果

大学卒業後20年間2万円を超える返済

奨学金を500万円借入した場合、奨学金制度だからこそ多くの支払い回数で分割できるもの支払い回数を200回以上(約20年)にしないと毎月2万円を超える返済額になります。

年間24万円の返済を新卒の給料でしていくのはハードルが高いと言えます。

そもそも奨学金の返済に滞るというのは借金返済をしていないことになりますが、奨学金自体に『返済義務』があり、実質的な借金だということを延滞してしまっている方の50%以上は知らなかった事実があります。

奨学金の返済ができるボーダーライン

奨学金の返済が滞っている方も正社員など日々働いている方が約74%です。

普通に働いても返しきれない奨学金というのがあるということです。

年収300万円台でも返済義務があっても返済できない可能性のある借入金額ということは、非常に不安を感じるデータと言えます。

参考:奨学金利用者の年収

引用元:日本学生支援機構(奨学金の返還者に関する属性調査結果

普通の人が『リボ払い』で自己破産することもある

筆者の私もある有名クレジットカードで『リボ払い』にした記憶がなくリボ払いになっていて金利を支払ったことがありました。

クレジットカードの申し込み用紙を確かめてみると、私の場合は『キャッシュバックキャンペーンの条件への同意』がリボ払いになっていたのです。

つまりこのキャッシュバックを受け取ったのち、リボ払いを解除しなければ永久的にリボ払いの残債が貯まることになります。

万が一、リボ払いの残債分を支払う預金や資金がなかった場合、リボ払いによる債務というのは十分に有り得たと言えます。

前述したクレジットカードによる購入9.35%にリボが含まれている可能性は十分あるので、くれぐれもクレジットカードの明細・申し込みは慎重にしなければなりません。

100万円未満の借金・債務・負債では自己破産はできない?

一般的には借金や負債の総額が年収の3分の1を超えていないと自己破産はできません。

さらに、自己破産は債務の額が100万円以下など少額の場合には一定の条件に当てはまらないとできません。

ここで注意なのは、

『収入に見合わない浪費やギャンブルなどにより借金』では基本的に自己破産ができないということもあるのです。

参考:浪費やギャンブルで自己破産ができない場合

あくまでも浪費やギャンブルをせずとも、今回は自己破産をする可能性は多くの方の身近にあることを伝えたい記事なのですが、『浪費やギャンブルで自己破産ができない場合はどうしているのか?』を参考程度にお伝えしておきます。

自己破産以外にも任意整理や個人再生を利用する

任意整理と個人再生

収入に見合わない浪費やギャンブルなどにより借金で自己破産が認められず、返済もできない状態であれば、『借金をした理由は問われない』債務整理が選択肢に挙がります。

任意整理の多くは、『金利なしの元本返済』になります。

『借りたものは返す』の原則は維持されます。

他にも『個人再生』という制度を用いて、借金を5分の1、上限で10分の1に縮小させ、3年間で返すように調整をすることもできます。

債務整理には4つ種類

種類特徴メリットデメリット
任意整理・将来の利息をカットする
・残債は3〜5年程度で分割払い
・他の債務整理に比べて手続きが簡単で手軽
・資産を失うリスクが低い
・家族や職場などに内緒で手続きしやすい
・元金は減額されないことがほとんど
・信用情報機関に登録される
個人再生・裁判所に認可を受けて借金を大幅に減額する
・残債は3~5年間で返済する計画を立てる
・任意整理より減額が大きい
・自己破産よりは資産を失うリスクが少ない
・借金が一部残るので、手続き後も返済が必要
・場合によっては車や資産を失う可能性はある
・信用情報機関に登録される
自己破産・裁判所に認可を受けてすべての借金返済を免除される・借金がなくなり、手続き後の返済も必要もなくなる・家や車などの財産を原則処分する必要がある
・一定の範囲で職業の制限がある
・信用情報機関に登録される
過払い金請求・過剰に支払っていた利息を取り戻すための請求・過剰に払っていた利息分が返金される・特になし

税金の支払いは自己破産では解決できないが・・・

『普通』にコツコツ生きてきた経営者やフリーランスも実は税金が払えないために自己破産を結果としてすることもあります。

自己破産をしても滞納している税金、払わないといけない税金が消えることはありません。

そうなると、自己破産をすることで解決できることがないと思うかもしれません。

しかし、税金を払うために分割支払い(遅延損害金の納付)をしたり、税金を優先的に納める代わりに生活費などをキャッシングやカードローンに頼ることになりやすいためです。

税金を借金して納付するメリットは?

キャッシングやカードローンで納付しないといけない税金を一括で支払うという選択肢にはメリットがあるか、と考え比較してみると、残念ながらキャッシングやカードローンの年利は15~20%が上限です。

税金の支払いを分割にしたり、遅延損害金に発生する金利は年20%です。

つまり、どちらも大して変わらないということになります。

フリーランス・個人事業主はなぜ自己破産のリスクが高いのか

黒字破産・黒字廃業の仕組み

フリーランスや個人事業主が一生懸命頑張ってコツコツ経営していても、なんのハプニングもなく自己破産を考えないといけない時代です。

具体的には、「利益が出ているのに、税金を払うことができない!」というのもひとつの事例です。

後継者問題以外にも黒字破産・黒字廃業が起こるのはやはり税金なのです。

「儲かっているなら税金を納めればいいじゃないか」特に、会社に勤めている方はそう思うかもしれませんが、実際は不可能なこともあるのです。

納税しないといけない利益が取引先の都合で入金が遅れ「売掛金」になっている場合はどうでしょうか?

全く節税を目的にしたり、会計などにミスがなくともたまたま『時期・タイミング』だけの問題で現金がない!ということは十分に有り得るのです。

さらに消費税は預かり金ですが、税金として納付する前は事業資金としているケースも多くあります。

そんな中、急な景気の落ち込みや市場の変化、天災・災害で意図せず焦げ付く仕組みというのは存在します。