ヘッジファンドのように株式投資を戦略的にブレずに決める方法
私たちが株式投資を行うには、非常に選択肢が多いことに悩む必要があります。
そもそも自分自身が何に、投資をするか決めることが難しいからです。
その点だけで言えば、『勘』を頼りに実は投資をおこなっている場合が多いです。
私自身も20歳から株式投資を始め、四季報や経済紙で注目される銘柄ばかりを購入してきました。
しかし、上手く投資の収益・儲けが出ないことに悩み、投資先を決める前に投資ルールを厳格化し、トライアンドエラーをしてみることにしました。
その理由は、海外の有名なファンドの中でも、自分たちのファンドはこうやって投資先を決めるというルールがあることを知ったからです。
株式投資自体が、まだファンドや機関投資家だけで個人投資家が少ない時代であればウォーレンバフェットのような投資手法・戦略も有効ですが、今となっては、あらゆる要因が重なり初心者の投資家では読み取れない情報や業績指数があります。
今回はヘッジファンドに習う、株式投資の銘柄の選定方法を事例と併せて解説していきます。
そもそもヘッジファンドとは?
投資家・資産家(個人、金融機関、年金基金など)から預かった運用資金を運用し、相場のボラティリティを常に反対売買を行いつつ運用することで、上昇トレンドも下降トレンドもどちらでも運用益がを生み出す運用をしています。
このボラティリティは運用益を出す以外に、リスクヘッジにも役立ちます。
このヘッジ(回避)がヘッジファンドの由来となっています。
ヘッジファンドの厳守する投資戦略とルール
ヘッジファンドの投資戦略は大別すると「アービトラージ型」と「ディレクショナル型」 に分類されています。
- 『アービトラージ型』は金利差や価格差を利用して収益を狙う戦略
- 『ディレクショナル型』は市場動向の方向性を予測して収益を狙う戦略
「アービトラージ型」と「ディレクショナル型」で更に細分化され、いくつかの代表的な投資戦略や手法に分かれていきます。
例えば、最もポピュラーとされている株式ロング・ショート戦略は「ディレクショナル型」の細分化された中の一つの投資戦略であり手法です。
ディレクショナル型の特性通り、市場の動きを予測し収益を狙う戦略で相対的に割安と思われる銘柄を買い建て(ロング・ポジション)、割高と思われる銘柄を売り建て(ショート・ポジション)するという2つのポジションを組み合わせて運用をしていきます。
現時点で、一番株式投資の戦略で多く、ヘッジファンドの23.4%は株式ロング・ショート戦略で運用を行なっています。
出所:三菱 UFJ 信託銀行作成
アービトラージ型の投資戦略とディレクショナル型の投資戦略
株式マーケットニュートラルとは?
株式市場全体のβリスクを避けるべく、株式のロング、ショートポジションをほぼ同量保有し、安定的な収益獲得を目指す戦略です。
どれだけ企業の戦略や経営状態が良くとも、外部要因に影響を受けて相対的に株価が下がるという現象は起こります。
この時のリスクヘッジとして、株価指数先物などを利用し、常に相殺して利益が出るように戦略立てをします。
この株式マーケットニュートラルではまず、市場の流動性以上に選定した銘柄が強い状態でなければ、効果は薄れることに留意するべきでしょう。
つまり、株式投資というのは業績や割安な銘柄を選ぶだけでなく、外部要因や影響を受けうる事案がどれだけあるかも確認し調べておくことが重要だと言えます。
β(ベータ)リスクと変動率
β(ベータ)とは、株式市場が1%変化した際に、選定した株式銘柄のリターンが何%変化するかを表す係数です。個別の株式の相対的なリスクを表します。
このβ値は、実際多くの経済指標の元値になっていて、日本の国債は常にβ=0としており、マーケットポートフォリオのβ=1としています。
ちなみにCAPM(資本資産価格モデル)により投資家が期待する利回りもわかります。
そのため資本コストを導く出すためには非常に重要な数値と考えられています。
債券アービトラージと転換社債アービトラージの投資戦略
債券アービトラージ戦略は、国債や金利スワップ、金利オプションなどの金利商品について、市場価格が本来の価値よりも割安であるもの、割高なものを見つけて購入します。
その際に、相関性が高い金利商品で割高なものを売り注文します。
そうすることで、マーケットニュートラルと同じ状態にすることが可能です。
転換社債アービトラージ戦略は、債券価格と株式価値の乖離が生じた場合用いる戦略であり手法です。
割安と判断できる転換社債を購入し、社債発行元の企業の現物株を売りに入れるという、相殺取引の仕方があります。
イベントドリブン型の投資戦略
本来はファンドの情報網を活かし企業の合併や買収・再編・提携などに関連する動きを探り、その企業や関連企業の動向で株価が大きく動くであろう企業に投資する手法です。
これは、個人の投資家でもこの新商品は売れる、品薄になるという予想をもとに買いを入れるという一番真似のしやすい戦略です。
しかし、イベントドリブンを個人投資家がメインでしていることは少なく、もしするのであればFXの為替に影響する指数の予想の方が効果的とも言えます。
個人は真似できないマネージドフューチャーズ戦略
この投資手法はアルゴリズム取引で売買を行うため、個人が真似するような投資戦略とは言えませんが、サブプライムローンによる金融恐慌が起こった際にヘッジファンドが生き残ることができたのはマネージドフューチャーズ戦略によるものだと言われているため、参考までにお話します。
世界中の先物取引・オプション取引を投資対象と考え、相場の上昇トレンド・下降トレンドの両局面で利益を発生させる投資戦略です。
このマネージドフューチャーズ戦略はCTA(Commodity Trading Advisor)戦略とも呼ばれています。
個人は真似できないグローバルマクロ戦略
世界中の国または地域の経済、金融市場、政治情勢などをマクロの視点から分析して、グローバル(世界的)な株式、債券、通貨、商品(コモディティ)、先物市場などあらゆる金融市場で売買する投資戦略です。
もちろん、圧倒的な情報分析量が必要なので、個人では到底不可能で、小規模のヘッジファンドでもグローバルマクロの手法を取り入れるのは難しい投資戦略です。
常に、世界中の投資商品を売り買いし、混ぜ込むことで結果して予想するベクトルへトレンドが移行すれば多額の投資収益を発生させることができます。
『どの投資手法がリスクが高く損が出やすいのか』
ディレクショナル型のリスクが高い傾向
株式投資でマネージドフューチャーズ戦略・グローバルマクロ戦略などのディレクショナル型の投資戦略は、当たれば大きいが、損する可能性も高いという部分があります。
だからこそ、ポートフォリオでリスク分散をすることを推奨する投資情報が多いとも言えます。
なぜディレクショナル型の投資はハイリスクなのか
どれだけたくさんの情報を集め、アルゴリズムを用いたりしても、天災などによる経済的リスク・突発的なリスクは予想がしにくいためだといます。
日本で言えば、地震や台風などが発生することによって、経済への影響を与えるほどになるかは、直近にならないとわからないのと同じなのです。
個人投資家はヘッジファンドの投資戦略をどう真似るべきか
最もヘッジファンドの投資戦略で重要視するべきなのは、
『相殺』することを前提にした投資戦略が多いということです。
しかし、過去には私は『集中投資』が分散投資より向いている人が多い理由という記事を書かせてもらいました。
資本・資金が少ないと分散投資は向かない
リターン率・収益性を下げる分散投資を少ない資本で行うとどうなるか、というと結果として利益がほぼ出ない状態になります。
もちろん、『損』も少ないですが、『得』もない状態になります。
『損をしないだけマシ』だと思うかもしれませんが、自己資金をリスクに晒す理由は利益を出すためです。
資本が少ないうちは分散投資ができるように集中投資をしていく方が、賢明な投資戦略
上記のように個人投資家とファンドでは資金力に違いがあるため、分散はさせると運用効率が落ちるというのも事実です。
しかし、株式投資での両建てのような相殺投資戦略は短期では上昇トレンドで中期・長期では下降トレンドに入る可能性があるならば、その市場への集中投資が重要だと言えます。
つまり何が言いたいかというと、株式投資ではこの手法・FXやビットコインではこの手法を投資のカテゴリーまで分けてリスク分散するのは、逆効果になるということです。
【まとめ】個人投資家が学ぶべきヘッジファンドの投資戦略
ヘッジファンドと個人投資家は情報的制約・人数的制約・資金の差、などいくつも違う部分があります。
しかし、ヘッジファンドも結局は企業であるため、『いつまでにこれだけの数字が欲しいというタイミング』というのもあるのは事実です。
個人投資家の多くは、目標を時期で定めることをせず、投資収益ベースで計算することが多い傾向があります。
1年という期間で投資実績を相殺させて、プラスでこれだけ残った。
このような自己資金だからこそ割り切りにくい、運用の仕方は真似ることができる点だと言えます。