『日本が先進国でなくなる』ことに『安心をしてはいけない』理由

『日本が先進国でなくなる』ことに『安心をしてはいけない』理由
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『日本が先進国でなくなる』ことに『安心をしてはいけない』理由

今後、日本は先進国というブランドを背負うことができなくなるという指摘や意見が散見される機会が増えました。

その理由にはGDP(国内総生産)やインフレ、法定通貨安(=円安)など数え切ればキリがないほどの理由が思いつきます。

▷▷『悪い円安』で投資家もお金持ちも会社員も苦しむ理由

しかし、先進国から仮に日本がなくなった場合、どのような問題が起こるのでしょうか?

それに加え、日本はなぜ先進国なのか、GDP世界2位、輸出額は世界第1位の中国がなぜ先進国でないのか、そもそも理解や説明ができなければ『先進国』であってもなくても変わらないのではないか、とならないためにもこの記事で、『先進国』と『日本』の関係性を知ってもらえれば光栄です。

先進国とは?途上国との明確な区分方法はあるのか

実は、先進国というのは先進国になる条件というのは曖昧な部分もあります。

一番簡単な先進国か先進国でないかを分けるのは『先進国首脳会議』に参加する国かどうかです。

ニュースでG7、G8と呼ばれるのは『先進国のトップが集まる会』であるため、少なくとも参加国に途上国はありません。

学校で学ぶ『先進国と途上国』の区別

これは非常に曖昧で、『豊かな国』かどうかという基準で先進国かどうかを区別しているように書かれるケースが多いです。

具体的には、

  • 政治や国の安定的な運営
  • 生産力・技術
  • 経済規模
  • 公共事業
  • インフラ整備
  • 生活水準の高さ(治安・貧困・医療・福祉)

などを基準に評価し、先進国かを判断します。

では、もっとリアルな資本主義の先進国かどうかのジャッジも紹介します。

「先進国クラブ」の存在

OECD (経済協力開発機構)というフランスのパリに本部を構える組織は、別名「先進国クラブ」と呼ばれています。

世界人口と比較すると35カ国の加盟(日本を含む)国の総人口は2割ほどですが、世界の総生産額では3分の2のシェアを抱えています。

つまり、『経済的に豊かな国』が加盟していると言えます。

先進国クラブ(OECD)では日本は平均以下

日本は2015年には既に『平均以下』、そしてアメリカ・韓国・台湾と比較すると下落ラインは日本だけだという自体になっています。

もちろん、様々な経済情勢もありますが世界でも多くの問題が常に起こっているため日本だけに限ったこととは言えないのも事実です。

日本が先進国であり続ける理由

国際通貨基金(IMF:International Monetary Fund)は主要国グループや各国の経済動向を世界レベルで調査・分析し、年2回、「世界経済見通し」として発表しています。

そのIMFにも日本は加盟していますが、日本はIMFへの出資割当額が2022年1月指標では、アメリカに次いで世界第2位の位置にいます。

つまり、GDPがどれだけ低くともIMFから見ると先進国の位置付けは相当の落ち込みがない限り変わらないと言えるのです。

日本が先進国であり続ける必要性

中国は胸を張って自国を『途上国』という理由

先進国というブランドバリューの曖昧さが何となくわかったところで、中国が先進国だと思っている方も実は大勢います。

アメリカですら、中国が『発展途上国』と名乗ることに意義を唱えた時期もありました。

  • 世界のトップ500企業のうち120社が中国企業
  • 中国のGDPは世界第2位
  • 輸出額は世界第1位

これで途上国だと言われると、日本はかなり厳しい立場になります。

自称『先進国』の日本と自称『途上国』中国

中国のメディアは確かに「自国は発展途上国だ」という情報を流しており、政府も発展途上国だという見解を変えていません。

逆に日本は先進国として発展途上国の支援を行うと言っています。

こうなると、もはや『先進国』であってもなくてもいいのではないか、という考えにすらなる方もいるでしょう。

日本が先進国としてどんな実績を出しているのか

日本が先進国として胸を張れるのは『経済力と科学技術力』だと言われています。

名目GDPは賛否があっても世界第3位なことには変わりなく、実は前述した先進国首脳会議(G7)に加盟しているのはアジア圏では日本だけだというのも事実です。

*賛否されるのは政府債務がGDPの2倍以上であるため,GDPが高いことに優位性がないという見解が多い。

将来性は揺るがされていますが、日本の白物家電・家電製品のブランド力・精密機器・半導体技術というのも世界で指折りの支持率があります。

つまり、日本は日本人が気づかないところで実力と実績を挙げている、挙げた過去はあるということです。

では、この実力と実績・私たちの私生活や経済力になぜ乖離が生まれているのでしょうか。

 

産業クラスターとは

経済産業省の政策資料から引用すると『技術×技術、人×人、市場×市場、ビジネス×ビジネスなど多様な資源を「融合」することでイノベー ション(新事業・新産業)が持続的に生み出される状態。』を意味します。

今の日本の経済状況は極めて厳しいのも事実

日本の『出遅れ経済・出戻り経済』

日本の一人あたりGDPは、OECD平均との対比は、1990年を天井に下降を続けています。

そのため、現在は1960年から1970年代と同じ状態なのです。

どれだけ『経済力と科学技術力』があっても上昇できていない点を見ると日本はかなり厳しい経済状態に今後もなっていくと言えるのです。

さらに、

日本の円安やインフレ・スタグフレーション・後継者問題・少子高齢化が今の日本の優位性にどこまで影響してくるかをかなげると危機感はやはり必要だと言えます。

明らかに日本が低迷ではなく明らかな下落をしている中、中国や韓国は日本の得意分野である『科学技術力』の実力も上げているため、『先進的・最先端』の発信源が日本ではなくなり始めているのも事実なのです。

日本が先進国でないと言われ始めたエビデンス・証拠はあるのか?

先進国という言葉で比較できる点が少ないことが、私たちよりも賢い方は百も承知の事実です。

しかし、それでも『日本が先進国で在り続けることができない』と言われるにはある程度にエビデンス(証拠)が必要になってきます。

日本とアルゼンチンが比べられることが一番危ない

日本が先進国でなくなるというエビデンスで一番多い理由は『アルゼンチン』との比較です。

若い世代の方は知らないと思いますが、アルゼンチンは元々 先進国でした。

経済崩壊が起こり、途上国となりました。

このアルゼンチンが先進国から途上国になっていくプロセスは、今の日本に酷似していると言われています。

アルゼンチンも日本と同じように優位性のある産業を抱え、先進国となりました。

その後、一定期間日本と同じように停滞・低迷の期間がありました。

この停滞・低迷はある意味『先進国である傲り』とも捉えることもでき、低迷は完全な下降・下落に向かいます。

一度落ち始めた経済は国ですらコントロールできず、経済崩壊をする結果になります。

日本が停滞した理由はサボりなのか?

ここで注意したいのが、日本はサボったから先進国としての危うさがあるのか、というと日本の国民性としてそれは否定するべきでしょう。

定年まで働き、税金を納め、年金で老後を過ごすというサイクルは至って真面目な国民性です。

しかし、保守的であることも確かです。

ビットコインなどの仮想通貨・暗号資産を保有し、日本のインフラでどれだけ活用できるでしょうか?

日本はインフラや法整備がキチンとしている分、暗号資産などのデリバティブ取引や外貨・為替取引に非常に厳しい金融商品取扱法などがあります。

特にレバレッジ率・取引銘柄などは『投資家の保護』というメリットがある一方、確実に外国と比較すると稼ぎにくい・運用益が出しにくい環境であるのも事実です。

つまり、私たちは国に守られることで、時代に乗り遅れていることになるのです。

ちなみに中国はデジタル人民元が発行されると今以上にキャッシュレス化が進むとされています。

それに加え、アメリカは既にビットコインATMなども登場し、法定通貨と同じような使われ方をしています。

▷▷▷仮想通貨・暗号資産は使い道がない?買い物で使うのは不便?実用性を解説

まだ新紙幣を作ろうとしている日本は中国やアメリカと比較すると、随分遅れを取ってしまったと言わざるおえないのも事実です。

「現金社会」の維持には「年間約9兆円」ものコストが必要

1万円札などの紙幣や500円などの硬貨を日本で使える状態に維持するのに年間8兆円後半から9兆円超必要とされ、予算が組まれています。

▷▷▷お金持ちが損をする?現金がなくなる時代はすぐそばに。より

お金持ちや成功者が日本からシンガポールに移住する理由

お金持ちや成功者がシンガポールに移住するのは、日本に限ったことではありません。

よく言われるのはスタートアップ(起業環境)・税制優遇措置においてのメリットです。

最近ではお笑いタレント・実業家・YouTuberの中田敦彦さんもシンガポールへ移住し話題となっています。

シンガポールは公用語は英語ですが、日常生活の多くは中国語が用いられています。

さらに、国民性として3カ国分の言語は当たり前のように話すことができ、治安も良くなりインフラも非常に整備されています。

日本と同じレベルの医療があるにも関わらず、日本と違い、地震などの天災リスクが少ないことも理由とされています。

このことを考えると、

子供の教育には多言語化もでき、日本よりシンガポールが選ばれる

▷▷▷Q&Aタックスヘイブン対策税制の実務と対応

▷▷▷「徹底解明」タックスヘイブン グローバル経済の見えざる中心のメカニズムと実態

『日本が先進国でなくなる』ことはないが・・・

ここで少しまとめてみると、何かしらの分野やカテゴリー・指数で上位をこのままキープできれば先進国と言い続けることはできるでしょう。

OECD (経済協力開発機構)、先進国首脳会議から外れることも現実的には可能性は低く、『日本は、先進国です』とは言えるものの、かなり状況は悪いと言えます。

だからと言っても、個人が先進国であるための努力というのは、あまりにも大きな課題となり、これが原因で、マネーリテラシーや金融リテラシーから距離を取ってしまうこともあるでしょう。

20代・30代はこの今の日本でどうやって生き抜くか

もっと言えば、先進国でなくなっても日本がいきなり、インフラの機能を失うのは天災の方がリスクが高いと言え、『先進国へのこだわり』やプライド、驕りを持たないことが重要だと言えます。

もっと言えば、先進国であっても途上国であっても優れた人材は、不自由を強いられることはありません。

決して、今の金融や経済レベルが個人単位で高いとは言えないので、『やる人かやらない人』かで格差は広がっていくと考えられます。

少しでも『今』を知り、金融・経済の知識を得て、マネーリテラシー・金融リテラシーの水準を高く維持する一歩を踏み出すことが重要だと言えます。

参考図書

高額書物で翻訳は少し残念ですが、筆者は政治学が専門の学者が民主主義の構造が財政赤字にどう影響を与えているかを解説しています。

ちなみに、この本はフランス、ドイツ、イタリア、スウェーデン、アメリカ、韓国、日本の7カ国を対象にしていて、外国為替などの予備知識としても有益性があります。

財政赤字の国際比較 民主主義国家に財政健全化は可能か [ 井手英策 ]

この記事の筆者である私が『MMT』について深く知識を得た1冊

MMTによる解説が現在の経済の仕組みにおいて私たちがどれだけ、金融リテラシーがどれだけ脆弱かを知らしめるものとなります。

この本一冊で、『金融』の疑うべきポイントも気づけるはずです。【筆:熊崎】

MMT現代貨幣理論入門 [ L・ランダル・レイ ]

 

 

人口大逆転 高齢化、インフレの再来、不平等の縮小 [ チャールズ・グッドハート ]

日本が先進国から脱落する日 [ 野口悠紀雄 ]

円安vs.円高 どちらの道を選択すべきか [ 藤巻健史 ]