イールドカーブを投資のチャンスと捉える!金融アナリストが解説するその理由

イールドカーブを投資のチャンスと捉える!金融アナリストが解説するその理由
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イールドカーブを投資のチャンスと捉える!金融アナリストが解説するその理由

イールドカーブは、金融市場の動向を理解する上で重要な指標であり、投資のチャンスを見極めるための貴重な情報です。

金融アナリストは、『イールドカーブ』をどう考え、『なぜイールドカーブが投資のチャンスを示すのか』について解説します。

イールドカーブの『いびつ』で稼ぐ秘密

イールドカーブが「いびつ」と表現される場合、一般的な形状から逸脱している債権市場を意味します。

通常、イールドカーブは長期債券の利回りが短期債券の利回りよりも高くなる正常な状態が多いですが、経済の状況や市場の要因によって、イールドカーブが非対称な形状を示すことがあります。

本来は、正常な状態(長期債券の利回りが短期債券の利回りよりも高くなる)の方が、投資や資産運用はしやすそうに思いますが、イールドカーブに関して大きく稼いでいくには、『いびつ』を待つ投資家が多いのが特徴です。

【確認】イールドカーブとは

イールドカーブは、異なる債券の利回りを期間別にグラフ化したものであり、金利水準と経済の健全性を示す重要な指標です。

➡︎【初心者もわかる】イールドカーブと逆イールドの事実、景気後退・リセッションとの関係

 

  • 短期金利が安い・長期金利が高いこの状態のイールドカーブは右肩上がりになり順イールド
  • 短期金利が高い・長期金利が安い状態で右肩下がりだと逆イールド
  • 逆イールド=期間が長くなるほど金利が低下する=「短期金利>長期金利」

イールドカーブと経済・市場の予測

通常の順イールドは短期債券の利回りと長期債券の利回りが高い状態で、この金利差が大きくなると「スティープ」状態となります。

一方で、景気の減速やリセッションの前兆となると長期債券の利回りが短期債券よりも低くなる「イビツ」な形状を示す場合があります=逆イールド

機関投資家やアナリストなどは、イールドカーブの形状と経済指標の動向を組み合わせて、将来の金利変動や景気の動向を予測します。

逆イールド発生から景気後退までの米国株

逆イールドの局面を迎えてからダウ工業20種の平均がどれくらい暴落したかを表にしているものを三井住友DSアセットマネジメントから参考にさせてもらいます。

この表を見ると逆イールドがアメリカ経済の暴落と関連づけできるようにも思えます。

アメリカは1990年以降、4度の景気後退(リセッション)が訪れており、米10年国債利回りと米2年国債利回りでの逆イールドはリセッションシグナルとも判断できることがわかります。

イールドカーブコントロール(YCC)と逆イールドの関係

逆イールドが金融や経済の不循環と捉えると、長期金利と短期金利のバランスを整える(コントロール)することで強制的に順イールド化させることがあります。

この時には基本的に、国債の買い入れ等を行い、市場操作・介入をし長期金利を上げていきます。

そして短期金利は長期へ流入しやすいように金利を調整させることを行います。

これがイールドカーブコントロールで、長短期操作とも呼ばれます。

簡単に言えば、自然にイールドカーブが逆イールド化しそうになったり、逆イールド状態になった場合、強制的に順イールドになるようにします。

ここで言えるのは、イールドカーブコントロールが行われるということは、景気動向事態に不安視している経済や金融があるということです。

=逆イールドは景気後退を判断するトリガーとも言えるのです。

イールドカーブにおける『ブルフラット状態』とは?

 

通常、イールドカーブは右肩下がりの形を取りますが、経済の状況によってはイールドカーブが上向きになることを「ブルフラット(Bull Flatten)」と呼びます。

中央銀行が金融政策を引き締めていく場合によく見られる現象と言え、中央銀行が政策金利を上げることで、短期債券の利回りが上昇し、長期債券の利回りが相対的に低下するため、イールドカーブが平坦化します。

つまり、長期債券の利回りが短期債券の利回りよりも速く上昇することを読み解くことができます。

このように聞くと、イールドカーブが上向きになる逆イールドを示唆しますが、ブルフラットの状態は基本的にフラットイールドです。

オーバーシュート型コミットメントと『イールドカーブ』の分析

オーバーシュート型コミットメント(Overshoot Type Commitment)は、中央銀行や政府が通常のインフレ目標を一時的に上回る程度のインフレを許容する政策手法を言います。

この手法は、長期的な物価安定を追求するために、一時的なインフレの許容を通じて経済を促進し、失業率の改善などを目指すものです。

一般的なインフレ目標は、2%程度の物価上昇率を維持することですが、経済が低迷している場合やデフレの懸念がある場合には、中央銀行がオーバーシュート型コミットメントを採用することがあります。

最も簡単な事例で言えば中央銀行が「一時的に物価上昇率を2%を超えても許容する」と言えば、将来のインフレ期待が高まることから長期金利が上昇する可能性があります。

イールドカーブが「ベアスティープ」なイールドカーブの形成が期待されます。

しかし、インフレ目標に対して目標を超えるということは過度なインフレを引き起こすリスクもあり、市場のバランスが崩れる可能性もあるため、注意が必要です。

ブルフラットとフラットイールドの違い

ますます、複雑で読むのをやめてしまった方もいると思います。

ブルフラットとフラットイールドは共通点もありますが、同じ意味ではありません。

まずブルフラットとフラットイールドは両方とも共通してイールドカーブが『平坦化』することを示しています。

厳密に言えば、ブルフラットは長期債券の利回りが若干高めである状況を指し、フラットイールドは全ての債券の利回りがほぼ同じ水準である状況を指します。

どのように使い分けるかというと『利回り差の大きさ』によって表現が異なります。

イールドカーブの『スティープ』は長期金利上昇のシグナル?

スティープなイールドカーブは、投資家が『将来的に金利が上昇する』を予想している場合に起きやすいです。

つまり、市場が将来のインフレや景気回復を期待し、それに伴って中長期的な金利が上昇すると予測していること投資家や市場の心理を読み解くことができます。

投資家が長期の債券に投資することで将来の高い利回りを得ようとするため、長期債券の需要が高まるのは必然的で、価格が上がれば利回りはニーズの過多により下がります。

スティープなイールドカーブは、経済が回復している兆候として分析されるのは、景気回復により金利だけでなく企業の業績が改善することが予想できるためです。

景気が回復すれば経済活動は活発になり、企業の業績も良くなると考えられます。

 

金融政策とイールドカーブの関係性

  • 中央銀行が金融政策を引き締めると、短期債券の利回りが上昇することもスティープなイールドカーブを引き起こす要因となります。
  • 中央銀行が金融政策を緩めると、短期債券の利回りが下降しフラットなイールドカーブ・逆イールドカーブ状態を引きを越す要因となります。

イールドカーブ ツイストフラットとスティープの関係

イールドカーブのツイストフラットとは、短期と長期の債券の利回りがほぼ同じでありながら、中間期間の債券の利回りがそれらよりも高い状態を指します。

このようなイールドカーブは、市場参加者が中期的な将来の金利を上昇させることを予想している場合に見られる特殊な形状です。

つまり、

短期と長期の債券の利回りはほぼ同じで、イールドカーブはフラットな形状の状態

=ツイストフラット

通常、イールドカーブは短期から長期にかけて利回りが徐々に上昇する「スティープ」な形状を取りますが、ツイストフラットでは途中の期間で利回りが一時的に上昇します。

これは市場が短期的な経済の好転やインフレの上昇を期待していることを意味します。

その結果、中期の債券に対する需要が高まり、価格が上昇して利回りが下がるため、中期の債券の利回りが一時的に高くなります。

ここでの注意点は、長期的な見通しでは市場参加者が金利を上昇させると予想しているため、長期債券の利回りが上昇することが期待されていることです。

イールドカーブの「パラレルシフト」

イールドカーブの「パラレルシフト(Parallel Shift)」は、金利水準の全ての期間において等しい幅で一律に上昇または下降する状況を指します。

つまり、短期から長期までの各期間の金利が同じ幅で動くことを意味します。

イールドカーブ の『期待理論』とは何か

期待理論は、経済や金融市場の参加者が意思決定をする際に、将来のリターンやリスクに対する期待に基づいて行動する理論です。

期待理論は投資家は潜在的なリターンやリスクを合理的に評価し、それに基づいて投資判断を行うとされますが、現実的には人間の意思決定は常に合理的なものではなく、感情や心理的要因が影響を与える場合も多くあります。

そのため、期待理論は市場心理や予測に基づいてイールドカーブの形状が変化すると考え、投資戦略を考えます。

アプローチであり、金融アナリストや投資家は市場参加者の期待を分析してイールドカーブの動向を予測する際に重要な考慮要素となります。

そもそも『イールドカーブ』の予想は計算できるのか

将来の利回りの予測値=フォワードレート

イールドカーブをモニタリングし注視し情報は集められますが、解析方法が『期待理論』などの非数理的とも言えます。

しかし、イールドカーブにおける分析や解析には『フォワードレート』という計算式が役立ちます。

イールドカーブのフォワードレート(Forward Rate)は、債券市場において将来の利回りを示す指標で、イールドカーブは異なる満期期間の債券の利回りをプロットしたグラフのため、フォワードレートはイールドカーブ上の2つの異なる時点(例:1年利回りと5年利回りなど)での利回りの差を表します。

イールドカーブにおけるフォワードレートは将来の利回りの予測値を計算式に基づいて算出します。

フォワードレート = (1 + r5) ^ 5 / (1 + r1) ^ 1 – 1

この数式によって投資家は現在から数年後の利回りの期待値を計算することができます。

イールドカーブの『ネルソン・シーゲル・モデル』活用法

イールドカーブのネルソン・シーゲル・モデル(Nelson-Siegel Model)は、債券の利回り曲線を表現するための計算式です。

債券の利回りが満期期間に応じてどのように変動するかを数理を活かして説明するために使用されています。

Y(t) = β0 + β1 * ((1 – exp(-t/τ))/(t/τ)) + β2 * (((1 – exp(-t/τ))/(t/τ)) – exp(-t/τ))

Y(t)=期間tまでの利回り

β0、β1、β2=モデルのパラメーター

τ=「均衡」または「速度」のパラメーター

 

この数式では、利回り曲線の特性を捉えるための柔軟な方法として広く使われています。

ネルソン・シーゲル・モデルを使用することで、投資家や金融機関は債券市場の将来の利回り動向を予測し、適切な投資戦略を立てるのに役立てることができます。

当然ながらこの数式ではファンダメンタルズが加味されていないので、

『ネルソン・シーゲル・モデル+ファンダメンタルズ』

『ネルソン・シーゲル・モデル+その他の経済指標』

という分析の仕方になってしまいます。

併用する情報が多ければ多いほど、分析には時間が必要で現実に起こる市場変動との乖離が生まれるため、債権での運用実績が多く経験が豊富な投資家に限られると言えます。

ちなみに、前述した『フォワードレート』も『ネルソン・シーゲル・モデル』も数値をエクセルなどで関数化している投資家もいます。

 

イールドカーブのリスクプレミアムとは?

イールドカーブのリスクプレミアム(Risk Premium)は、債券の利回りに含まれる追加のリスクに対する補償としてのプレミアムを指します。債券の利回りは、一般的にリスクフリーレート(例えば国債利回り)にリスクプレミアムを加えることで計算されます。

債券の利回りは、債券を保有することに対するリスクによって影響を受けます。リスクプレミアムは、投資家がリスクを取ることに対して求める追加のリターンを意味します。一般的に、リスクが高いとみなされる債券は、リスクプレミアムが高くなります。逆に、低リスクの債券はリスクプレミアムが低くなります。

リスクプレミアムは市場の需給によって変動します。投資家がよりリスクを取ることに対して補償を求める場合、リスクプレミアムは上昇します。例えば、景気後退や金融危機などの不安定な経済状況では、投資家がリスクを避ける傾向が強まりますので、リスクプレミアムが増加する傾向があります。

逆に、景気が回復し安定した経済状況では、投資家がリスクを取る意欲が高まりますので、リスクプレミアムが低下することがあります。

リスクプレミアムの理解は、投資家が債券を選択する際に重要です。リスクプレミアムを考慮することで、期待リターンとリスクをバランスさせた適切な投資判断ができます。ただし、リスクプレミアムは市場の変動によって常に変化するため、投資家は市場状況を常に把握し、リスクプレミアムの変動に敏感に対応する必要があります。

イールドカーブの『アービトラージ』

ここでイールドカーブの知識を蓄え、投資に活かせるだけの十分な観察量を持てばイールドカーブは自分の資産を増やすことができるという考えについてです。

『イールドカーブ』に基づいた投資戦略で代表的なのは『アービトラージ』があります。

アービトラージは、イールドカーブの異常な形状を利用して、異なる満期期間の債券を同時に売買することで利益を上げる取引戦略です。

一般的なイールドカーブを用いる投資では、逆イールドカーブの状況下で、投資家は長期債券を売却して利回りの高い短期債券を購入し、イールドカーブが正常な状態に戻るのを待ち利確します。

つまり、株式投資で言えば株価が安い状態で買い、株価が上がれば売るのと同じように、逆イールドから順イールドに戻ると、利益が得られます。

イールドカーブアービトラージは、金融市場の不均衡を利用するため、不均等を待たなければならないためタイミングは限られますが、投資戦略としては正攻法だと言えます。

イールドカーブにおける『ロールダウン効果』で収益を最大化する

イールドカーブのロールダウン(Roll Down)は、債券の保有期間中における利回りの変動による収益の要素を指します。

簡単に言えば、債券の利回りが保有している間に低下することによって、保有者が利益を得るメカニズムを言います。

『なぜロールダウン化が起こるか』というと債券の利回りは、長期の債券よりも短期の債券の方がリスクが低く、より安定して返済されやすいため債券の残存期間が短くなるにつれて一般的に低下する傾向があるためです。

ロールダウンは、債券の価格変動と利回りの関係に基づいています。

債券の価格は利回りと反比例の関係にあり、利回りが低下すると債券の価格は上昇します。

保有期間中に利回りが徐々に低下することにより、債券の価格が上昇し、保有者は価格差による収益を得ることができるのです。

つまり、投資家が利益を最大化させるには『ロールダウン』が生じやすい長期債券を保有することがポイントになってきます。

長期債権を満期まで所有し、満期までわずかになればロールダウンが生じ利益を増やしやすいのです。

もちろん、ロールダウンでレバレッジ化を狙っても、それ以上にイールドカーブに大きな影響を与える経済指標などがあれば、チャンスは流れてしまいます。

特に、債権のカテゴリーは価格の変動・金利の変動・信用リスクなど多くの影響を与える因子があるため見極めは重要です。

 

イールドカーブのブートストラップにはどんな特徴があるのか

イールドカーブのブートストラップ(Bootstrap)は、債券の市場価格を元にしてゼロクーポン債(Zero Coupon Bond)のイールド(利回り)を推定する方法です。

そのためゼロクーポン債は利息を含まない純粋な割引債として発行されます。

債権での投資をしない方のために補足すると、ゼロクーポン債は利息(クーポン)を支払わずに発行時に割引価格で発行される債券です。

ゼロクーポン債はイールドカーブ以外に長期の投資家や退職資産の運用、教育資金の貯蓄などに利用され債権投資の世界ではかなり重要です。

ブートストラップの基本的は市場で取引されている複数の債券の価格から、それぞれの債券のイールドを推定し、その推定したイールドを用いて、前述のゼロクーポン債のイールドを計算します。

期間ごとに推定したイールドを用いてゼロクーポン債のイールドを合成します。

このプロセスによって、債券市場の金利水準や将来の金利動向の予想に精度が高まります。

 

イールドカーブと保険『アクチュアリーとの関係性』

「アクチュアリー(Actuary)」は、保険業界や年金業界で数理的な手法を用いてリスクを評価し、保険商品の設計や価格設定を行う専門家のことを指します。

アクチュアリーは数理統計学や財務工学などの専門知識を持ち、統計データや過去の経験を元に将来のリスクを予測する役割を担います。

イールドカーブは、アクチュアリーが保険商品の価格設定やリスク管理に利用する重要な指標の一つです。

長期債券の利回りは金利の動向や経済の健全性に影響されるため、アクチュアリーはイールドカーブの変化を監視し、保険商品のリスク評価に反映させることがあります。

イールドカーブが異常な形状を示す場合には、保険商品の価格設定やリスク管理において慎重な対応が求められる局面だと判断します。