『悪い円安』で投資家もお金持ちも会社員も苦しむ理由

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『悪い円安』で投資家もお金持ちも会社員も苦しむ理由

2022年の流行語になりそうな「悪い円安」という言葉。

そもそも、良いも悪いもなく、言うならば『暑すぎる夏・寒すぎる夏』ちょうど良い以外は全て悪いという評価になるのも確かです。

大袈裟に言って悪い状態なのか、表面化で非常に危険性の高い状態を隠しているのか。

ここが投資家やお金持ち・経営者が一番知りたいことだと言えます。

もちろん、会社で勤める方々も極めてわかりやすいインフレ・物価上昇にどこまでついていけるのか不安を感じているでしょう。

円安とはどういう状態なのか

日本銀行が模範回答として用意しているのは

円安とは、円の他通貨に対する相対的価値(1円単位で交換できる他通貨の単位数)が相対的に少ない状態のことです。

円高とは、円の他通貨に対する相対的価値、言い換えると、円1単位で交換できる他通貨の単位数が相対的に多い状態のことです。

引用:日本銀行 円高、円安とは何ですか?より

円安・円高のメリット・デメリット

 
円高 円安
メリット
  • 輸入品を安く買えるようになる
  • 輸入産業には条件が良い
  • ドルやユーロなど外貨が相対的に上がる
  • 輸出産業には条件が良い
デメリット
  • ドルやユーロなど外貨が相対的に上がる
  • 輸出産業のは条件が悪い
  • 輸入品が高くなる
  • 輸入産業のには条件が悪い

円安は悪いことなのか

上記の表を見ると、メリットとデメリットが同じ数だけあるように見えます。

実際、円安というのは日本は輸入に依存しているため、総合的に全ての商品・サービスで値上がり基調になります。

つまり、会社の業績や経営を気にする前に、日本のようなGDPの低い国の『自国通貨・安』は個人や家庭に影響が顕著に出る傾向にあります。

円安は経済や会社経営に悪いことなのか

トヨタ自動車が2021年の4~12月期決算では、サプライチェーン(供給網)の混乱により、生産台数の計画こそ引き下げたにも関わらず営業利益は過去最高でした。

この発表やニュースを見て、「儲かっているのか」と思う一方、企業努力より以前に『円安』が営業利益をカサ増しさせたと言えるのです。

この理由としては輸出関連企業・鉄鋼・自動車・精密機器・電機などの多くは円安基調になり始め、さまざまな情勢で苦しむ中でも『景気は良い』とも感じられる上方修正が相次ぎました。

円安なのに上方修正されない企業の特徴

前述のトヨタ自動車のようなドル建て輸出は、まさに円安がプラス要因として機能しますが、国内企業で生産ラインが海外にある場合などは円安はほぼ『無風』の影響と言えます。

国内企業の多くは海外製品向け・自国製品向けの両方を作っていますが、海外に生産ラインを移すことで『円安・円高』どちらに振れても中長期的に見るとドルコスト平均法のような状態になります。

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昨今の円安を『悪い』と表現するのはなぜか。

悪い円安の原因

アメリカの中央銀行にあたる連邦準備制度理事会(FRB)が、2020年3月に始めた『ゼロ金利政策』を終了させることに原因があります。

つまりアメリカは金利を上げるため、日本は継続してゼロ金利であるため、アメリカに資金を移す方が運用益が生まれるという非常にわかりやすい原因があります。

もちろん、日本が金利を引き上げればこの円安の流れ止まりやすくなりますが、日本政府としては円安に恩恵があるため金利を上げることをしようとしていません。

自国通貨の『円』の価値は低いほど良い?

ここで日銀の黒田総裁は

「円安が経済にプラスに作用しているという構図に変わりはない」

と発言しました。

その後、数ヶ月で

「急速な円安はマイナスが大きくなる」

という発言があったことを考慮すると、基本的に自国通貨の価値は急速に円安にならない限りは良いとも捉えることができるのです。

そこで思い返してみることにしました。

日本の今が『悪い円安』ならば数年前は『悪い円高』

リーマンショックやトランプ前大統領の人気中、アベノミクスを含め、2008年ごろから極めて長い円高水準が続いていました。

その時に、私たちの景気は良かったのでしょうか?

今は物価上昇のインフレ状態で、スタグフレーション状態なことにストレスを感じていますが、円高だからと言って恩恵もなければ、むしろ海外市場での価格競争に負ける(商品自体の値段ではなく、通貨差によるもの)ことが起こりました。

日本の需要と消費量と海外需要と消費量を比較すれば、企業は海外のシェア率を確保したいと考えるはずです。

もちろん、日本政府も国を維持していくためには、冷静「急速な円安はマイナスが大きくなる」が、「円安が経済にプラスに作用しているという構図に変わりはない」と言えるのです。

円安とインフレの関係

良いインフレと悪いインフレ

円安に仮にも『悪い円安』があるのであれば、インフレにも『悪いインフレ』があることを説明させてもらいます。

私たちが義務教育で学ぶインフレは基本的に『良いインフレ』です。

そのためインフレとデフレのどちらが良いかと聞かれると『インフレ』が良いと答える方が多いはずです。

しかし、2021年から2022年にかけてのハイバーインフレ・スタグフレーションと呼ばれる状態は良いとは言えないはずです。

原材料の高騰により身近な商品の値上がりを肌で感じるようになります。

企業は値上げをしても原材料費やコストが上がっただけなので粗利益・純利益に好転せず、値上がりしても消費者個人である自分たちの所得・収入・経済力は変わらない状態です・

このインフレを教科書では解説を避けますが。これが『悪いインフレ』と言えます。

下記の図は総務省統計局の基準消費者物価指数の折れ線グラフですが、給料や収入が伸びているとは言えない中、物価が上がっていることが顕著にわかると言えます。

補足:教科書が説明するインフレ

需要が供給のバランスが需要過多である傾向があり、商品やサービスの値段を上げても消費者が買う状態です。

尚且つ、この商品やサービスの値段を上げても買えるだけ給料も相対的に上がり、景気が良いと判断されるのです。

インフレが円安を加速させる

シンプルに同じ商品を買うにも『たくさんのお金を払う(=円の価値が低い)』ことになるのがインフレです。

これは一般消費に限らず、輸入などのビジネスでは共通して言えます。

つまりインフレと円安は常に相関性があるため、インフレ・デフレの兆候をチェックすることで円安・円高の傾向を予測することも可能です。

重ねてインフレになりやすい出来事『赤字国債』の発行や『増税』は円安基調になりやすいできごととも関連づけることができます。

 増税がインフレを招く理由

消費税の税率が上がることと、家計や経済の景気は相関していないため、物理的に支出が一方的に増えることになります。

これはインフレ傾向になるため円安にもなりやくなります。

赤字国債とは

国を運営していくための支出が、税収だけでは足りないときに、足りない分を補うため役割があります。

国債は国の借金とも言われ利子を支払う必要があります。

国債という借金の残高・残債が増えれば増えるほど国の財政は苦しくなります

つまり、相関して国の運営不調=自国通貨の価値・評価が落ちるという仕組みになります。

スタグフレーションと円安の関係

インフレと円安の関係性が見えてきた中で『スタグフレーション』という言葉をニュースや経済紙で耳にしたことがあると思います。

このスタグフレーションは過去に1970年のオイルショック時に発生しました。

このスタグフレーションは景気停滞を意味する「スタグネーション(Stagnation)」と「インフレーション(Iinflation)」を組み合わせた合成語です。

つまり、『悪いインフレ』の状態を表します。

国や政府がスタグフレーションを否定するのは、インフレを否定しているのではなく『日本の景気後退』を認めてしまうことによるデメリットの方が大きいためとされています。

円安・インフレ・スタグフレーションが改善する方法は?

今までの傾向で強いのは『口先介入』です。

前述の日銀の黒田総裁の「急速な円安はマイナスが大きくなる」という発言はマイナスが大きくなるから『止める』『強制的に止める』必要性・思考があると捉えることができます。

もちろん、実際に市場に資金を投入することなく、言葉だけで外国為替相場(円安に対してならば円に対して)の動きを変えようとすることをいいます。

通貨マフィアのコミット

『通貨マフィア』とは証券用語でもポピュラーで財務省の財務官・為替政策の担当・責任者を言います。

この通貨マフィアたちは、外交ルートを使って間接的に自国通貨と為替のバランスを軌道修正するクローザー的な役割を担っています。

もちろん、直通回線での協議をすることも可能であるため、口先介入であっても機関投資家などは過敏に反応する傾向があります。

為替介入は強制執行で円安・インフレを止められる

為替介入は強制的に軌道修正をするかなり強引な方法です。

これは基本的に突発的偶発的天災等が行なった際に用いられる方法です。

為替介入の仕組みは非常に簡単で、上げたい通貨、円安であれば『円』を大量に買い集めるということです。

円を大量に買えば必然的に円の価格は上がるので、この上がるトレンドラインに投資家は順張りしたいと考えるため、相乗的に通貨の価値を上げることができます。

過去の為替介入事例

2011年の東日本大震災時に1ドル75円台の「円高」時に、一日で8兆円分の米ドルを購入し円安へ軌道修正させました。

『悪い円安』投資家やお金持ち・会社員ができること

外貨預金の保有でインフレに備える

仮にも『悪い円安』であり、悪いインフレでスタグフレーションに苦しむ場合、私たちはどうすればいいのか。

ここが一番重要な部分だと言えます。

これは投資家やお金持ち・会社員全員ができるのは、円という法定通貨への依存度を減らすことです。

つまりは、『円以外を買う』という方法です。

アメリカドルやユーロ、ポンドなどを購入し保有する方法もありますし、仮想通貨・暗号資産などに資産・資金を分散させるという選択肢です。

特に仮想通貨・暗号資産を活用するのは、『悪い円安』であり、悪いインフレでスタグフレーションで注目を浴びています。

金融・経済知識を自身の生活環境や経済環境で活用できるか検証するマネーリテラシーは、学校では教えてくれません。

『悪い円安』『悪いインフレ』『スタグフレーション』対策は仮想通貨・暗号資産を保有する

なぜ日本人はビットコイン・仮想通貨を買わないのかという過去のコンテンツでもお話しましたが、

仮想通貨・暗号資産でもっともポピュラーなビットコインは開発時から希少性を発生させインフレを抑制させるため、発行上限枚数が2,100万BTCという発行総量が決まっています。

2019年に約80%、既に1,800万BTC分は世に出ており発行が完了していますが、半永久的にアクセスできない状態になっている約400万~600万BTCのビットコインがあるとされ、実質1200万BTCほどしか流通していないことになります。

さらに、世界総人口70億人に対して一人当たりのビットコイン数量は0.0027 BTCしかないと見積もられています。

つまり、希少性がある通貨を保有できるのは仮想通貨・暗号資産だけと言えるのです。

法定通貨は国や政府が中央集権の管理者として発行量を決めているため、国や政府のの方向性に依存するしかありません。

その中でビットコインなどの多くの仮想通貨は通貨インフレの対策が組み込まれた状態であるため、ボラティリティが高いことに懸念はありますが、分散させる候補としては都合が良いと言えます。

▷▷▷ビットコイン(デジタルゴールド)は本当に金(ゴールド)と同じ価値があるのか

参考図書

高額書物で翻訳は少し残念ですが、筆者は政治学が専門の学者が民主主義の構造が財政赤字にどう影響を与えているかを解説しています。

ちなみに、この本はフランス、ドイツ、イタリア、スウェーデン、アメリカ、韓国、日本の7カ国を対象にしていて、外国為替などの予備知識としても有益性があります。

財政赤字の国際比較 民主主義国家に財政健全化は可能か [ 井手英策 ]

この記事の筆者である私が『MMT』について深く知識を得た1冊

MMTによる解説が現在の経済の仕組みにおいて私たちがどれだけ、金融リテラシーがどれだけ脆弱かを知らしめるものとなります。

この本一冊で、『金融』の疑うべきポイントも気づけるはずです。【筆:熊崎】

MMT現代貨幣理論入門 [ L・ランダル・レイ ]

 

 

人口大逆転 高齢化、インフレの再来、不平等の縮小 [ チャールズ・グッドハート ]

日本が先進国から脱落する日 [ 野口悠紀雄 ]

円安vs.円高 どちらの道を選択すべきか [ 藤巻健史 ]