新発債30兆円割れ:財政再建と経済成長のバランスを問う
政府は2025年度予算案を27日に閣議決定しました。今回の予算案では、歳出入総額が115.5兆円と、昨年度当初予算比で3.0兆円増加しています。この増加の背景には、国債費や地方交付税、防衛費の増額といった要因が挙げられます。一方で、予備費の縮減や歳出削減努力も見られ、財政の持続可能性を意識した内容となっています。
歳出入115.5兆円の重み:3兆円増加が示す日本経済の行方
予算案のフレームと歳出の動向:国債費の増加
当初予算比で+1.2兆円増加。積算金利(10年債利回り)が2024年度の1.9%から2025年度には2.0%に引き上げられたことが主因です。
なお、積算金利には安全余裕(バッファー)が設けられており、実際の市場金利より高い水準で設定されています。
地方交付税交付金の増加
国の税収増加を背景に、地方交付税も+1.3兆円増加しました。地方交付税は国税収入の一定割合を地方自治体に配分する仕組みであり、税収増が直接影響しています。
防衛費の増額
2023年度以降、段階的に進められている防衛費の増額が2025年度も継続され、+0.8兆円の増加となっています。
歳出削減の取り組み
- 予備費の縮減
- 2024年度に計上されていた物価対策・賃上げ促進のための1.0兆円の予備費が廃止されました。
- 一般予備費は1.0兆円とされており、2023年度以前の0.5兆円水準と比べると多い額が確保されています。
- 社会保障関係費の効率化
- 社会保障費は+0.6兆円の増加ですが、薬価改定や高額療養費の見直しを通じて▲0.14兆円の削減が行われています。これにより、歳出の増加幅を一定程度抑えています。
税収と新規国債発行額の動向
税収の増加
税収は78.4兆円と、昨年度比+8.8兆円の増加が見込まれています。この背景には、経済回復や税制改正の効果が反映されています。
新規国債発行額の減少
当初予算ベースの新規国債発行額は28.6兆円と、24年度の35.4兆円から大幅に減少しました。30兆円を下回るのは17年ぶりのことです。
補正予算における新発債も減少傾向にあり、23年度の8.9兆円から24年度には6.7兆円へ減額されています。
【まとめ】歳出入115.5兆円の重み:3兆円増加が示す日本経済の行方
115.5兆円の内訳と増加要因
歳出入総額が115.5兆円に達した主な要因は以下の3点です。
1. 国債費の増加(+1.2兆円)
予算編成時に前提とされる10年債利回りが2024年度の1.9%から2025年度には2.0%に引き上げられました。この積算金利の上昇により、利払い費が増加しています。興味深い点は、政府が設定する積算金利にはバッファーが設けられており、実際の市場金利よりも高めに設定されていることです。この保守的な姿勢は、急激な金利上昇に備えるためのリスク管理といえます。
2. 地方交付税交付金の増加(+1.3兆円)
税収増加を背景に、地方交付税も増額されました。地方交付税は国の税収の一定割合を地方自治体に配分する仕組みであり、税収増加に伴い自動的に増える構造になっています。この増額は、地方経済の安定や地方自治体の財政基盤を支える重要な役割を果たします。
3. 防衛費の増額(+0.8兆円)
政府は防衛費の段階的な増額を進めています。2023年度予算以降、防衛費の拡大は国際的な安全保障環境の変化に対応するための重要な政策として位置づけられています。
財政健全化に向けた課題と展望
今回の予算案では、税収増を背景に新規国債発行額を抑制する姿勢が示されました。しかし、国債費や社会保障費といった歳出の増加要因は依然として大きな課題です。
政府は「骨太方針」に基づき、歳出削減や効率化を進める一方で、防衛費増額や地方交付税の拡充など、政策課題への対応も求められています。財政健全化の道筋を確実なものにするためには、歳出の抑制と税収の安定的な確保が不可欠です。
今後の経済動向や市場金利の変化が財政運営に与える影響を注視しつつ、持続可能な財政構造を目指す取り組みが求められるでしょう。