お金の価値がどんどんなくなる?なぜ私たちは貧しくなるのか

お金の価値がどんどんなくなる?なぜ私たちは貧しくなるのか

お金の価値がどんどんなくなる?なぜ私たちは貧しくなるのか

最近、こんな感覚はないでしょうか。

以前なら1,000円で済んでいた昼食が、1,200円、1,300円になった。

スーパーに行っても高い。

ホテルも高い。

電気代も高い。

家賃も上がる。

それなのに、

自分の給料だけは、それほど増えていない。

だから私たちは、

物価が高くなった

と感じます。

もちろん、それは間違いではありません。

しかし見方を反対にすると、もう一つの現象が起きています。

物の値段が上がったのではなく、お金の価値が下がっている。

今回はこの視点から、なぜ普通に働いているだけなのに私たちが貧しくなったように感じるのかを考えてみます。

100万円は10年後も100万円

例えば、銀行口座に100万円があるとします。

10年後も使わなければ100万円です。

数字だけを見れば、

100万円 → 100万円

なので、何も減っていません。

ところが物価が毎年2%上昇したとしましょう。

100万円で買えていたものは、10年後には単純計算で約122万円必要になります。

つまり10年前の100万円と同じ購買力を持つためには、約122万円が必要になる。

逆に言えば、10年間ずっと100万円を現金で持っていた場合、

通帳の数字は減っていないのに、買えるものは減っています。

これがお金の価値が下がるということです。

インフレは見えない値上げではなく、見えない現金の目減りでもある

インフレというと、

卵が高くなった
ガソリンが高くなった
ホテルが高くなった

という話になりがちです。

しかし私は、もう一つの見方をしたほうが分かりやすいと思っています。

現金の購買力が少しずつ削られている。

例えば100万円を持っていて、物価が1年間で3%上昇したとします。

銀行口座には100万円あります。

しかし前年と同じ商品を買おうとすれば103万円必要です。

つまり実質的には、

100万円 ÷ 1.03 ≒ 97万1,000円

程度の購買力しかありません。

現金を盗まれたわけでもありません。

投資で失敗したわけでもありません。

それでも実質的な購買力は落ちています。

給料が3%上がっても、豊かになったとは限らない

ここが非常に重要です。

例えば年収500万円だった人の給料が3%上がって、

515万円になったとします。

15万円増えています。

普通なら、

給料が上がった

となります。

しかし同じ期間に物価も3%上昇していたらどうでしょう。

大ざっぱに言えば、購買力はほとんど変わりません。

さらに税金や社会保険料などの負担まで考えれば、手取りベースでは違う結果になることもあります。

だから見るべきなのは、

給料が何円増えたかではなく、給料で何が買えるようになったのか。

これが実質賃金の考え方につながります。

なぜ私たちは貧しくなったと感じるのか

理由は非常に単純化すると、

収入の増加より、生活コストの上昇が速ければ貧しくなるからです。

例えば、

年収 500万円 → 510万円
生活費 300万円 → 330万円

だったとします。

年収は10万円増えています。

でも生活費は30万円増えています。

名目上は年収が上がっているのに、自由に使えるお金は減っています。

これが、

給料は上がっているらしいけれど、全然豊かになった気がしない

という現象の正体の一つです。

円安になると日本人はさらに貧しくなるのか

ここに為替の問題が入ってきます。

日本は、

エネルギー
食料
原材料
半導体
ソフトウェア
クラウドサービス

など、海外から多くの商品やサービスを購入しています。

例えば1ドル100円なら、100ドルの商品は1万円です。

1ドル160円なら、

100ドル × 160円 = 16,000円。

同じ100ドルの商品なのに、日本人からすると6,000円高くなります。

海外の商品が値上げされたわけではありません。

円の価値がドルに対して下がったことで、日本人から見た価格が上昇したのです。

もちろん実際の輸入価格は契約、ヘッジ、物流費など様々な要素で決まるため、すべてがそのまま価格転嫁されるわけではありません。

しかし極端な円安が続けば、輸入コストを通じて日本国内の物価に影響します。

海外旅行に行くと日本人が貧しくなったように感じる理由

これは海外旅行に行くと非常に分かりやすいと思います。

昔なら、

1万円あれば結構遊べた

という感覚だった海外でも、現在は違います。

食事をして、

ホテルに泊まって、

タクシーに乗って、

買い物をする。

円換算すると驚くような金額になることがあります。

これは現地だけが豊かになったという単純な話ではありません。

現地の物価上昇に加えて、

日本円の購買力が相対的に弱くなっている

ことも大きく影響します。

国内にいると気付きにくいですが、海外へ出ると通貨の強さが可視化されます。

では、お金を持っている人も同じように貧しくなるのか

ここからが重要です。

インフレになると全員が同じ割合で貧しくなるわけではありません。

なぜなら資産を持っている人は、

株式
不動産
事業
外貨建て資産
金などの実物資産

を持っている場合があるからです。

例えば物価が上昇する局面で企業の売上や利益も伸びれば、株価が上昇する可能性があります。

不動産価格や賃料が上昇することもあります。

海外資産を持っていれば、円安によって円換算の資産額が増える場合もあります。

一方、

資産の大部分を現金・預金だけで保有している人は、インフレによる購買力低下を直接受けやすい。

ここに大きな違いが生まれます。

100万円を持っている人と、100万円の資産を持っている人

極端な例を考えてみます。

Aさんは100万円を現金で持っています。

Bさんは100万円分の生産的な資産を持っています。

10年後、物価が上昇している世界を想像してください。

Aさんの100万円は、基本的には100万円のままです。

一方、Bさんの資産については価値が上昇している可能性があります。

もちろん投資には値下がりもあります。

不動産も株式も必ず上昇するわけではありません。

だから、

現金を全部投資すればいい

という話ではありません。

重要なのは、

現金100万円と資産100万円は、同じ100万円でも性質が違う

ということです。

借金すらインフレによって意味が変わる

さらに面白いのが負債です。

例えば固定金利で1,000万円を借りたとします。

10年後も元本ベースでは1,000万円です。

しかし、その間に物価や賃金が大きく上昇した場合、1,000万円という金額の実質的な重さは小さくなる可能性があります。

逆にデフレになれば、借金の実質的な負担は重くなります。

だから経済では、

現金
資産
負債

をすべて同じ円という数字だけで考えると、本質を見失います。

本当に見るべきなのは金額ではなく購買力

私たちはつい、

年収1,000万円
貯金3,000万円
売上1億円

という数字で豊かさを判断します。

しかし本来重要なのは、

そのお金で何が買えるのか。

です。

30年前の1億円と現在の1億円。

現在の1,000万円と10年後の1,000万円。

数字が同じでも、その価値が同じとは限りません。

お金そのものに絶対的な価値があるわけではなく、

商品
サービス
土地
労働
他国通貨

などと交換できる量によって価値が決まるからです。

企業経営も同じ

これは個人だけの話ではありません。

企業経営でも、

売上が前年比5%増えました

だけでは、本当に成長したのか判断できません。

例えば、

売上 +5%
原材料費 +10%
人件費 +6%
電気代 +15%

ならどうでしょう。

売上高は過去最高でも、利益は減っている可能性があります。

さらに物価上昇まで考えれば、実質的な事業規模がほとんど成長していないこともあります。

だからインフレ時代の経営では、

売上の金額ではなく、実質的にどれだけ付加価値を増やせたのか

を見る必要があります。

AIやDXも実はここにつながっている

私はAIやDXについて発信していますが、実はこの問題とも深くつながっています。

物価が上がる。

人件費が上がる。

採用コストが上がる。

クラウド利用料も増える。

しかし企業が商品価格を無限に上げることはできません。

ではどうするのか。

一つの答えが、

一人あたりの生産性を上げることです。

例えば10人で行っていた仕事を、AIやDXによって同じ10人で1.2倍処理できるようにする。

これは単なる人員削減ではありません。

インフレによって様々なコストが上昇する社会で、

企業が実質的な豊かさを維持するための防衛策

でもあります。

なぜ私たちは貧しくなるのか

結局、この問いへの答えはシンプルです。

私たちが貧しくなるのは、

持っている円の数字が減るからではありません。

その円で、

買える食料が減る。
買えるエネルギーが減る。
買える家が減る。
買えるサービスが減る。
海外で買えるものが減る。

つまり、

購買力が低下するからです。

銀行口座に1,000万円あれば、来年も1,000万円と表示されます。

だから安心してしまいます。

しかし本当に見るべきなのは数字ではありません。

昨日1万円で買えたものが、今日いくらなのか。

自分の給料は物価以上に増えているのか。

自分の会社の利益はコスト上昇以上に成長しているのか。

そして、自分の持っている資産は購買力を維持できているのか。

これからの時代、

お金を貯めることと、資産を守ることは同じではありません。

お金の数字だけを見るのではなく、

そのお金に、どれだけの力が残っているのか。

私たちはそろそろ、そこを見る必要があるのではないでしょうか。