- 1. 金融・経営を語ってきた室崎敬太氏が、次に選んだテーマはAIとDXだった
- 2. まずは出版、おめでとうございます。実際に本になった感想はいかがですか?
- 3. なぜタイトルを『AI・DX経営論』としたのでしょうか
- 4. 一流養成学校では以前、金融や投資の記事を多く書かれていました。かなり大きな方向転換にも見えます
- 5. 本の副題にある断絶の時代とは何を意味していますか?
- 6. AIによって人の仕事がなくなるという議論についてはどう考えていますか?
- 7. 特に中小企業こそAIを使うべきだと発信されています
- 8. 実際のAI・DX導入では、技術より人間の問題のほうが大きいのでしょうか
- 9. AI時代に経営者へ最も求められるものは何でしょう
- 10. AIが発達するほど、人間の価値について考えるようになったそうですね
- 11. この本は、どんな人に読んでもらいたいですか?
- 12. 一流養成学校の読者に向けて、今あらためて一流とは何だと思いますか?
- 13. 最後に、これから何を目指しますか?
- 14. インタビューを終えて
- 15. 書籍情報
金融・経営を語ってきた室崎敬太氏が、次に選んだテーマはAIとDXだった
一流養成学校において、金融リテラシー、投資、経営、働き方など、数多くのテーマについて執筆してきた室崎敬太氏。
当時の記事を知る読者にとって、室崎氏には金融や経営のイメージが強いかもしれない。
しかし、その後の室崎氏が進んだのは、AI・DXという領域だった。
現在はMUR-Systems代表として企業のDX・AX戦略に携わるほか、馬車馬テクノロジーズでは業務執行社員としてChief Strategy Officerを務め、
複数企業の顧問としてAI・LLMを活用した業務改革や新規事業開発に関わっている。
そんな室崎氏が今回、自身の考えをまとめた書籍
『AI・DX経営論――断絶の時代に、日本企業がどう生き残るか』を出版した。
一流養成学校で金融や経営について発信していた人物は、なぜAIの世界へ向かったのか。
そして、室崎氏が本書のタイトルに掲げた
断絶の時代とは何を意味するのか。
出版を機に話を聞いた。
まずは出版、おめでとうございます。実際に本になった感想はいかがですか?
ありがとうございます。
もちろん出版できたこと自体は嬉しいのですが、何かを達成したという感覚とは少し違います。
どちらかというと、
今まで考えてきたことを、一度ここで整理しておこう
という感覚のほうが強いですね。
もともとnoteなどでAIやDX、経営についてかなりの記事を書いていました。
ただ、一つひとつの記事は、その瞬間に考えていることを切り取ったものです。
それを一冊の本として並べてみると、
AIの話をしているようで、結局ずっと日本企業の経営や働き方について考えていたんだな
ということに自分自身でも気づきました。
今回の本は、単純なAIの使い方の本ではありません。
ChatGPTの操作方法を説明するような本でもない。
AIが登場したことで、会社や経営そのものをどう考え直す必要があるのか。
そこを書いた本です。

なぜタイトルを『AI・DX経営論』としたのでしょうか
AIだけでは足りないと思ったからです。
最近はどうしても生成AIが注目されます。
ChatGPT、Gemini、Claudeなど、新しいAIが次々登場しています。
しかし経営者の立場から見れば、本当に重要なのは
どのAIを使うかではありません。
会社のどこに無駄があるのか。
社員はどこで時間を失っているのか。
情報はどこに蓄積されているのか。
意思決定はどう行われているのか。
その構造を理解したうえでAIを組み込まなければ、AIを導入しても会社は変わりません。
だからAIだけではなくDXが必要です。
そしてDXだけでも足りない。
最後は経営です。
そこで、
AI
DX
経営
この三つを分けずに考えるという意味で『AI・DX経営論』としました。
一流養成学校では以前、金融や投資の記事を多く書かれていました。かなり大きな方向転換にも見えます
自分では、あまり方向転換した感覚はありません。
金融リテラシーについて書いていた頃も、
なぜ同じ給料なのに資産形成できる人とできない人がいるのか
なぜ同じ会社員でも10年後に大きな差が生まれるのか
という構造に興味がありました。
AIやDXも同じです。
同じ50人の会社でも、生産性が高い会社と低い会社がある。
同じ8時間働いても、利益を生む会社と、書類やメールや会議だけで一日が終わる会社がある。
その違いは何なのか。
結局、僕が昔から興味を持っているのは、
人や会社の能力そのものより、差が生まれる構造なんだと思います。
金融からAIへ移ったというより、
分析している対象が個人から企業へ広がったという感覚ですね。
本の副題にある断絶の時代とは何を意味していますか?
今起きている変化は、単なる技術革新ではないと思っています。
少し前まで、
パソコンが得意な人
パソコンが苦手な人
という差はありました。
それでも仕事そのものが成立しなくなるほどの差ではなかった。
AIは少し違います。
AIを使って1時間で終わる仕事を、AIを使わずに5時間かける。
AIなら数分で調査できることを、人間だけで半日調べる。
そうした差が、これから普通に発生します。
しかも、その差は徐々にではなく、かなり速いスピードで広がっていく。
僕はこれをデジタル格差ではなく、仕事の断絶だと考えています。
AIを使う会社と使わない会社。
AIを使う社員と使わない社員。
データを蓄積する会社と、紙のまま残す会社。
数年後、この差はかなり大きくなっていると思います。
AIによって人の仕事がなくなるという議論についてはどう考えていますか?
僕は少し違う見方をしています。
AIによって人が不要になるというより、
AIを使わない仕事の一部が不要になる
というほうが近いと思っています。
例えば野球でピッチングマシンが導入されたからといって、野球選手が不要になるわけではありません。
バッティングピッチャーが投げ続けなければできなかった練習を、機械が担当できるようになった。
その結果、人は別の役割に時間を使える。
AIも同じです。
議事録を作る。
資料を探す。
メールの文章を整える。
報告書の下書きをする。
データを整理する。
こうした業務に毎日1時間使っている社員が50人いれば、
1日50時間。月20営業日なら、月1,000時間です。
この1,000時間を人間がやり続ける必要が本当にあるのか。
そこを考えるのが経営だと思っています。
特に中小企業こそAIを使うべきだと発信されています
人が足りないからです。
大企業なら、
採用する
部署を増やす
外注する
という選択肢があります。
中小企業ではそれが難しい。
だから、
今いる50人を55人、60人分の生産性に近づけるという発想が必要になります。
AIはそのための非常に強力な道具です。
僕はAIを人員削減の道具として見るより、社員の時間を会社に取り戻すための道具
として考えています。
人口が減少していく日本では、この考え方は今後かなり重要になると思います。
実際のAI・DX導入では、技術より人間の問題のほうが大きいのでしょうか
圧倒的にそうですね。
システムを作ることより、
なぜ今までのやり方を変えなければならないのかを理解してもらうほうが難しい。
AIを導入すると、今までこれでやってきたAIなんて信用できない
自分の仕事がなくなるのではないかという反応が出ます。
でも、これはある意味当然です。
人間は自分が長年身につけてきた方法を否定されたように感じると抵抗します。
だからAI導入はITプロジェクトであると同時に、組織変革プロジェクトでもあります。
ツールだけ導入して終わりではない。
社員教育、人事評価、ルール、情報管理、経営者の姿勢までセットで考える必要があります。
AI時代に経営者へ最も求められるものは何でしょう
詳しくなることではないと思います。
経営者がプログラミングできる必要もありません。
ただし、
知らないままでいいと思わないこと
は非常に重要です。
昔の経営者が、インターネットなんて分からないから使わない
と言っていたらどうなっていたか。
今では想像できると思います。AIも同じです。
ChatGPTを完璧に使えなくてもいい。
ただ、
自社にどんな影響があるのか
競合がどう使う可能性があるのか
社員がどんな使い方をしているのか
くらいは理解する必要があります。
分からないことと、知ろうとしないことは全く違います。
AIが発達するほど、人間の価値について考えるようになったそうですね
これはかなり考えます。
AIの仕事をしていると、
これもAIでできる
これも自動化できる
というものがどんどん増えます。
すると逆に、では人間にしかできないものは何なのかを考えるようになります。
僕はその一つが、経験することだと思っています。
実際に人と会う。
失敗する。
現場を見る。
空気を感じる。
怖いと思う。
嬉しいと思う。
そうした経験そのものはAIにはありません。
AIが100万冊の本を読めても、初めて契約を取ったときの嬉しさは知りません。
経営がうまくいかない夜の不安も知りません。
だからAI時代になるほど、人間の経験や感性の価値は逆に上がると思っています。
この本は、どんな人に読んでもらいたいですか?
一番読んでほしいのは、中小企業の経営者や管理職です。
特に、
AIが必要なのは分かるけれど何から始めればいいか分からない
という人ですね。
エンジニア向けの本ではありません。
むしろ、
AIに詳しくない人のために書いています。
もう一つは若いビジネスパーソンです。
これから10年、20年働く人にとってAIは避けて通れません。
だからAIを恐れるより、
自分の能力を拡張する道具として使ってほしい。
AIを使える人と仕事を奪い合うのではなく、
AIと一緒に仕事をする側に回る。
それだけでも、これからのキャリアはかなり変わると思います。
一流養成学校の読者に向けて、今あらためて一流とは何だと思いますか?
昔は一流という言葉に、
年収
会社
役職
持ち物
学歴
みたいなイメージが強かったと思います。
もちろん、それらも一つの結果です。
ただ今は、
変化し続けられる人
なのではないかと思っています。
10年前の成功体験を守る人より、
昨日まで正しいと思っていたことを、必要なら今日変えられる人。
AIが出てきたら使ってみる。
分からなければ勉強する。
若い社員のほうが詳しければ教えてもらう。
そういう人のほうが圧倒的に強い。
一流というのは、
何でも知っている人ではなく、
知らないことを認めて、学び続けられる人
なのかもしれません。
最後に、これから何を目指しますか?
AIそのものを売ることには、あまり興味がありません。
AIを使って会社がどう変わるのか。
働いている人がどう変わるのか。
そこに興味があります。
日本には、技術力も経験もノウハウもあるのに、
デジタル化できていないために十分活かせていない会社がたくさんあります。
そうした会社の中にある知識や技術をAIと接続する。
会社が何十年も蓄積してきたものを、次の世代へ残していく。
そこには大きな価値があると思っています。
AIで人間を減らしたいわけではありません。
AIを使って、人間がもっと価値のあることに時間を使える会社を増やしたい。
今はそれが一番やりたいことですね。
インタビューを終えて

一流養成学校で金融、投資、経営について言葉を発信してきた室崎敬太氏。
その関心は金融からAIへ変わったように見える。
しかし話を聞いていると、根底にある問いは以前から変わっていない。
なぜ同じ条件でも差が生まれるのか。
個人の資産形成について考えていたその視点は、現在、企業の生産性やAI活用へと広がっている。
AIは人間を排除する技術なのか。
それとも、人間の可能性を広げる技術なのか。
室崎氏の答えは明確だった。
AIそのものが会社を変えるのではない。
AIをどう使うかを決める人間と経営が、会社を変える。
そして変化の速度が増していく時代に必要なのは、未来を完璧に予測する能力ではないのかもしれない。
変化を拒まず、学び、試し、必要なら昨日までの常識を捨てる力。
それこそが、AI時代に求められる新しい一流の条件なのではないだろうか。
書籍情報
『AI・DX経営論――断絶の時代に、日本企業がどう生き残るか』著:室﨑 敬太
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AI・DXの導入方法だけではなく、人手不足、組織改革、AIリテラシー、経営、働き方、企業の競争力までを横断的に論じた一冊。
室﨑氏がこれまで発信してきた論考をもとに、大幅な加筆・再構成を行い書籍化した。
